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「軽く投げられているのか…」ダルビッシュ有の“立ち投げ”が巨人を翻弄した日【日本シリーズの衝撃】

posted2020/11/21 06:01

 
「軽く投げられているのか…」ダルビッシュ有の“立ち投げ”が巨人を翻弄した日【日本シリーズの衝撃】<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

2009年の日本シリーズ。巨人が先勝して迎えた第2戦のマウンドに、ダルビッシュ有は立った。ところが普段とまるで違う姿に味方までが驚き、巨人打線は困惑することになる

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Naoya Sanuki

サイヤング賞で2位に輝いたダルビッシュ有は、日本ハム時代も絶対的存在として君臨し、日本シリーズでもその熱投でドラマを紡ぎだした。驚愕のピッチングを目撃した人々の証言を集めた記事を特別に公開する。

日本ハムのエースは投げることができるのか――。'09年の日本シリーズで、焦点の一つとなったのが故障を抱えるダルビッシュ有の回復具合だった。
巨人が先勝して迎えた第2戦のマウンドに、背番号11は立った。ところが普段とまるで違う姿に味方までが驚き、巨人打線は困惑することになる。
【初出:Sports Graphic Number 1014号(2020年11月5日発売)「ダルビッシュ進化論。」/肩書などはすべて当時】

2009年11月1日 日本ハム 4-2 巨人

 一瞬、顔が強張ったように感じた。

「可能性はゼロではないと思っていました。ある程度の準備、心構えというのはしていたし、試合前には(先発で)来るかもしれないという情報も伝わってきていた。でも、メンバー交換して改めて、名前を見たときには『来たか!』と。ちょっと武者震いのようなものを感じましたね」

 2009年の日本シリーズ第2戦。試合前のメンバー交換を終えた瞬間の思いを、巨人の監督・原辰徳はこう振り返った。

 日本ハムの監督・梨田昌孝と交換したスターティングオーダーに記されていた投手の名前は「ダルビッシュ有」だった。

「正直言って投げて欲しいとは思っていましたが、私も投げられるとは思っていなかった。最終的に(先発を)決めたのは、確か日本シリーズが始まる1日か2日前だったと思います」

 こう語って梨田は記憶を手繰り寄せた。

監督室に来て「もう投げられない」

 この年のダルビッシュはワールド・ベースボール・クラシックから帰国後、間もない4月3日の開幕戦に先発して黒星を喫したが、前半戦は12勝3敗、防御率1.31の好成績で折り返した。ところがオールスター戦で打球が右肩を直撃。8月22日には右肩の違和感で登録抹消されるなど、後半戦は故障に苦しむシーズンとなった。9月には戦線に復帰したものの、今度は左臀部を痛めて、9月20日のオリックス戦では5回で7四球を与えてKO降板した。

「確か直後の福岡遠征だったと思います。本人が監督室に来て『もう投げられない』と言ってきた。それで登録を抹消しました。その時に将来のこともあるし、本人が投げると言ってくるまで、絶対に投げさせるのはやめようと決めていたんですね」

 梨田は待ち続けた。

 シーズンが終わり、クライマックスシリーズ(CS)に備えて宮崎のフェニックスリーグにも帯同したが、その時点では「ポストシーズンで投げるのは難しい」というのが本人の申告だった。その後もブルペンに入ることはあったが、本人からGOサインが出ることはなかった。

【次ページ】鶴岡「おいおい、これで本当に投げんのかよ」

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