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“奇人”ビエルサ「その血が必要なのです!」、グアルディオラとの“11時間の議論” 

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赤石晋一郎

赤石晋一郎Shinichiro Akaishi

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posted2020/09/11 11:45

“奇人”ビエルサ「その血が必要なのです!」、グアルディオラとの“11時間の議論”<Number Web> photograph by Getty Images

昨季、リーズの指揮を取りチャンピオンシップで優勝を果たしたビエルサ(中央)。今季はプレミアリーグでペップ率いるマンチェスター・シティとも戦う。

ビエルサは1日2本の映画を見ている。

 話を戻そう。

 ビエルサもペップの来訪をとても喜んだ。ロサリオのスタッフをブエノスアイレスまで車で迎えに行かせ、アサード(アルゼンチン風バーベキュー)を用意するなど歓待したのだ。

 ビエルサとペップ、そして彼の友人の3人。アイスブレイクとなったのは、ペップの友人ダビドによる映画話だったという。

 ダビドは後にメディアの取材にこう答えている。

「マルセロの映画への情熱には本当に驚かされた。彼は毎日、1日に2本の映画を見ているそうなのです」

 ビエルサにとって唯一の趣味が映画鑑賞なのだ。好きな映画は『ゴッドファーザー』。実際に、日韓ワールドカップでも荒川はビエルサから『自室にDVDを設置したい』といのいちばんに依頼されている。

 映画鑑賞はサッカー狂であるエル・ロコにとって、唯一サッカーを忘れさせてくれる時間なのだろう。

 ペップは待ちきれない様子でサッカーの質問を始めた。

 ビエルサは身振り手振りを交え、真剣に答えていく。時にペップをディフェンダーにし、2つの椅子をアタカンテ(アタッカー)に見立てて守備シーンの分析も行われた。

「椅子をどうマークするか僕はとても苦心したよ。もっとも椅子が僕を抜き去ることはないのだがね(笑)。マルセロが監督経験のない私をもてなしてくれたことについては感謝してもしきれないよ」

 後にペップは“伝説の一夜”についてこう回想している。

 ペップはビエルサの話を必死にノートに書き留めた。しかしノートのページはすぐに無くなってしまい、ペップはビエルサから新しいノートを貰う羽目となるのだ――。

(後編「ビエルサとグアルディオラ、『戦術的に信じられない』雨中の“美しい試合”の衝撃」は下の「関連コラム」からご覧ください)

荒川友康(あらかわ・ゆうこう)

サッカー指導者。アルゼンチンで複数のチームや滝川第二高校での指導を経て、ジェフ千葉・育成コーチ、京都サンガ・トップチームコーチ、FC町田ゼルビアトップチームコーチなどを歴任。ビエルサのみならず、Jリーグでもアルディレスなどの名将の元で働く。アルゼンチンサッカー協会認定のS級ライセンスを所持。FCトレーロス所属。

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