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明石商vs.智弁和歌山にプロも注目。
今年の“練習試合”は真剣度が凄い。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2020/07/11 11:30

明石商vs.智弁和歌山にプロも注目。今年の“練習試合”は真剣度が凄い。<Number Web> photograph by Kyodo News

今秋のドラフトで上位指名が予想される明石商の中森俊介。智弁和歌山との対戦で感じるものがあったようだ。

試合が少なくても目を引く選手を探して。

 スカウトにとっても、今年は非常に難しい年になっている。選手たちが冬場の鍛錬を経て春にどんな姿を見せるのか、そこから最後の夏に向けてどう成長していくのか、負けたら終わりの勝負どころでどんな姿を見せるのか、今年はそれらをつぶさに追うことはかなわなかった。

 一方で、あるスカウトは、「やはりプロに行く選手というのは、(アピールするチャンスが)数少なくなっても結果を出すというか、そういう(目を引く)姿を見せると思う。逆に言えば、そういうところを出せる子たちが、本当にプロで活躍できる子なのかもしれない」と話す。

 また、各学校の指導者も、この未曾有の年に、選手たちをどう導くか、特に3年生をどのように送り出すかということに頭を悩ませている。

 明石商は部員数が100人を超える大所帯。今夏の兵庫県の独自大会は8強までしか行われないため、勝ち進んでも最大4試合。狭間善徳監督は、その中で3年生39人をどのように起用するか苦心する。

3年間の着地点を探すために。

 智弁和歌山の中谷監督は、夏の甲子園と地方大会が中止になり、まだ代替大会の開催が決まる前、3年生部員1人1人を呼んで、「どうしたい? 何がしたい?」と胸の内を聞いた。

「親が見にきたいと思うので、親に見てもらえる試合をしたい」という選手や、中には、「2年生1年生には僕らの代わりに日本一になってほしいから、もう早く(新チームに)切り替えてほしい」と言う選手もいたという。

 その中に、「去年センバツで敗れた明石商とやりたい」、「昨夏の甲子園で負けた星稜にリベンジしたい」、「親友がいる履正社とやりたい」、「(昨秋の明治神宮大会優勝の)中京大中京とやりたい」といった希望があった。

 中谷監督は「じゃあ、頼み込んで練習試合組んだる」と、各校に片っ端から連絡をとり練習試合を実現した。明石商とはダブルヘッダーを行い、1試合目は明石商、2試合目は智弁和歌山が勝利した。

 7月18日には兵庫県、和歌山県ともに県の独自大会が開幕する。また、今年のセンバツに出場予定だった明石商、智弁和歌山は、8月に甲子園で開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」の1試合が、3年生にとって最後の試合となる。7月8日に行われた抽選会で、明石商は桐生第一、智弁和歌山は尽誠学園と対戦することが決まった。

「日本一」という目標のない今年の夏。それぞれの着地点を懸命に探しながらの日々は続く。

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