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<覚悟の夏を語る>
花巻東・菊池雄星「監督を男にしたかった」

posted2019/07/26 08:00

 
<覚悟の夏を語る>花巻東・菊池雄星「監督を男にしたかった」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph by

Nanae Suzuki

東北勢に初の日本一をもたらすところまであと一歩に迫りながら、涙を飲んだ高校時代。メジャーを目指して過ごした濃密な時間を夢が叶った今、アメリカの地で振り返る。(Number983号掲載)

 マリナーズとの契約を交わすために渡米することが決まっていた菊池雄星は、花巻東高校の佐々木洋監督、流石裕之部長、菊池の父、雄治さんらと一緒に、去年の12月、花巻で食事をともにした。その別れ際、雄治さんは佐々木監督にこう言った。

「私の子育ては15歳までで終わりました。それからは監督が父親でした。帰省しても実家より先に花巻東に行くような子ですから、これからも雄星を厳しく指導してやって下さい」

 父のこの言葉を聞いたとき、菊池はこう感じたのだという。

「そうだ、父の背中を見るように、15歳のときから僕は監督の背中を見てきたのだと思いました。そして、父は死期を悟っていたから、そんなことを言ったんだろうなぁと思い、涙が出ました」

 今年の3月、がんで闘病中だった雄治さんは、この世を去った。そして菊池は今、メジャーリーガーとしてマリナーズのユニフォームを着て、マウンドに立っている。

「アメリカへ出発する前に、佐々木監督には、『すべてを想定内にしておけ』という言葉をいただきました。メジャー1年目はうまくいかないことが絶対にあるから、すべてのことに対して最悪の状態をイメージしてやりなさいと……いいイメージばかりではなく、最悪をイメージしておけば、すべてが想定内になって対処できるからと言われたんです。その考え方は今の自分にとって、大きかったと思います」

 メジャー1年目、前半戦の菊池はマリナーズのローテーションをほぼ守って、19試合に先発。4勝6敗、防御率4.94と、数字だけを見ると苦しんだ印象が残った。3月の日本での開幕シリーズでメジャー初登板を果たしてから3カ月、4月は勝ち星こそ1つだけだったものの安定したピッチングを見せていたが、5月下旬から4連敗を喫するなど、疲れを感じさせる。圧巻のピッチングを見せたこともあれば、一発に泣いたこともあり、味方のミスに足を引っ張られたり、援護がなく、勝ちに見放された時期もあった。自信のあった低めのストレートを右バッターにいとも簡単にスタンドまで運ばれ、日本で無双を誇ったスライダーには左バッターが踏み込んでくる。菊池はこう振り返った。

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