甲子園の風BACK NUMBER
明石商vs.智弁和歌山にプロも注目。
今年の“練習試合”は真剣度が凄い。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/07/11 11:30
今秋のドラフトで上位指名が予想される明石商の中森俊介。智弁和歌山との対戦で感じるものがあったようだ。
日本ハムスカウト「欠点がない」
初回はコントロールに苦しみ、四球、安打、暴投で1点を失ったが、尻上がりに調子を上げ、強打の智弁和歌山を5回1安打1失点に抑え、11三振を奪った。
スカウト陣が評価するのは「総合力の高さ」だ。日本ハムの加藤竜人スカウトは、「コントロールがいい。変化球もなんでも放れるし、欠点という欠点がないですね」と言う。
ソフトバンクの稲嶺誉スカウトは、「やはり力を入れたボールは素晴らしいものがある。彼の性格だとか頭脳というものも考えると、(プロで)ローテーションに間違いなく入っていけるピッチャー」と、人間性も含めた総合力の高さを評価した。
中森自身も、「前の練習試合のビデオを見ながら少し修正しました。回を重ねるごとに、どういう感じで抑えていくとか、そういう流れもできてきて、後半はよかったと思います」と順調に調子が上がっている様子だった。
自分への評価はいつでも厳し目。
ただ、周囲の高評価にも本人はいたって冷静で、いっさい自分を過大評価しない。変化球が多かったこの日の投球について、こう語った。
「智弁和歌山はまっすぐに全員強いから、力勝負に行っても、今の自分では抑えられないと思うので、変化球でカウントを整えて、最後にまっすぐを決め球に、というのはありました」
「今の自分のまっすぐ」に対する物足りなさ。それは中森と入れ違いで6回からマウンドに上がった智弁和歌山のエース・小林樹斗の投球を見て、より強くなったようだ。
「小林と比較した時に、(小林は)まっすぐでファウルを取れたり、カウントを整えることができる。でも自分は、まっすぐに張られていたら打たれるんで……。伸びとかキレというのがまだまだかなと思います。
もともと自分はそんなに、ものすごいまっすぐを投げられるっていうタイプじゃない。変化球で追い込んでまっすぐを決め球にするか、もう一回変化球でタイミングを外して打ち取るというのが自分のピッチング。それに加えてまっすぐのキレも増して、スピードも出て、小林みたいな球が投げられたら、ピッチングの幅が広がるのかなと思います」