甲子園の風BACK NUMBER
明石商vs.智弁和歌山にプロも注目。
今年の“練習試合”は真剣度が凄い。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/07/11 11:30
今秋のドラフトで上位指名が予想される明石商の中森俊介。智弁和歌山との対戦で感じるものがあったようだ。
明石商・来田と智弁和歌山・小林の因縁。
確かに、この日の小林のボールは伸びがあった。昨年の春、夏の甲子園を経験し、中森と同じくドラフト候補として注目される最速148キロ右腕は、この日、力強さを増したストレートを軸とした迫力のある投球で、明石商打線を押し込んだ。
圧巻だったのは、8回に明石商の1番打者・来田涼斗を迎えた場面。昨春のセンバツ準々決勝で、小林は来田にサヨナラ本塁打を打たれている。
その来田に対して、小林は「ウア!」と気合いの声を発しながら投げ込む。追い込んでからは全球ストレートでインコースを突き、来田もフルスイングで応えてファウルで粘る。最後は小林がこの日最速の147キロでショートフライに打ち取った。
試合後、来田は「昨年のセンバツに比べると、迫力が増した。球の威力も増していたので、追いついていくのに必死でした」と小林との対戦を振り返った。
智弁和歌山の中谷仁監督は、「最後の最後が一番甘い球で、バッターが打ち損じたという形なので、あれはリベンジしたとは言えないですけど、なんか、気持ちが入っていたというか、見ていて感じる部分はありましたよね」と目を細めた。
体つきも直球も急速に進化中。
この勝負にはスカウト陣も「見応えがあった」と満足そうだった。
小林は、1年から2年、2年から3年と、体つきも変化しめざましい成長を見せている。日本ハムの林孝哉スカウトは、「いいものを見れました。小林君は(自粛期間が)明けてから初めて見ましたが、まっすぐがよくなりましたね。しっかり上からたたけている」。オリックスの下山真二スカウトも、「力の使い方というか、リリースのところにうまく力を集めるという能力がすごく高い。これからもまだまだ伸びしろが期待できる楽しみな選手」と語った。