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甲斐拓也10年目、背負う重責と19番。
ムーア復活+有望株を伸ばすリード。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/06/17 11:40
もはや甲斐拓也の代名詞となった「キャノン」に加えて、打撃力やリードでも。今季は10年目の経験値をホークス投手陣に還元する立場となる。
甲斐キャノンにリードも磨いて。
プロ野球は3年やって一人前と認められる世界だ。甲斐は昨季まで3年連続ゴールデングラブ賞を獲得した。さらに「チームが勝つことが何よりの評価の基準」とされるのがキャッチャーだ。昨季まで3年続けてホークスが日本一に輝いたのは、甲斐の力なくしては語れない。
'18年の日本シリーズではMVPに輝いた。歴代のプロ野球名捕手をも圧倒する鉄砲肩「甲斐キャノン」が最大のウリだ。ただ、一方で少し前まではリード面の評価はさほど高くなかった。それを一遍させたのが昨年の巨人との日本シリーズだ。
「日本シリーズを戦うと捕手は心底疲れ果てる。だが、捕手を成長させる場だ。短期決戦の戦いは、1球たりとも疎かにできない。司令塔としての責任の重さを背負う」
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甲斐が尊敬してやまない野村克也氏がずっと口にしていた捕手論だ。
昨年のシリーズで、甲斐は坂本勇人がキーマンになると見極めて第1戦から内角攻めをこれでもか、これでもか、としつこく行った。丸佳浩に対しても同様に攻めた。逆に4番の岡本和真には外角の変化球を何球も続けた。強烈な意識づけに成功したことで、逆シリーズ男をリードで作り上げたのだ。ホークスは全く隙を見せずに4勝0敗でジャイアンツを下したのだった。
涙を浮かべてノムさんの19番を継承。
今季は、かつて野村氏が現役時代につけていた背番号「19」を継承して戦うシーズンだ。ホークスの捕手が19番をつけたのは野村氏以来である。今春のキャンプ中は突然の訃報に接し、涙を浮かべて悲しんだ。
「出来れば19番のユニフォーム姿を直接見てもらいたかった。見せたかったです。すごく悲しい。ただ、この19番を背負って、これからしっかりと頑張る姿を示していきたいと思います」
育成ドラフト6位から這い上がった苦労人だ。たくさんの支えに助けられて成長してきた。今季が入団10年目。そして、正捕手となってから積み重ねた年月もある。
これからは甲斐がチームを引っ張り、成長を後押しする番だ。