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甲斐拓也10年目、背負う重責と19番。
ムーア復活+有望株を伸ばすリード。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/06/17 11:40
もはや甲斐拓也の代名詞となった「キャノン」に加えて、打撃力やリードでも。今季は10年目の経験値をホークス投手陣に還元する立場となる。
大物助っ人ムーアの力を引き出せ。
ホークスの火曜日先発は新外国人左腕のマット・ムーアが務める。来日前の実績は抜群の大物助っ人だ。
'07年ドラフト8巡目でレイズに入団。マイナーで圧倒的な成績を残して'11年9月にメジャーデビューを果たすと、その年の地区シリーズ第1戦に抜てきされ7回2安打無失点に抑えて勝利投手になり一躍注目を集めた。翌年の開幕前にはブライス・ハーパーやマイク・トラウトといった現在のスーパースターを抑えて有望株ランキングの1位の評価を受けている。
'13年は17勝4敗をマークするなど、シーズン2桁勝利も記録した。その投手がまだ30歳という年齢で日本球界にやってきたのだ。
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やはりというかワケはある。昨季はメジャーで2試合しか登板していない。4月の試合で右膝に打球を受け、同箇所の半月板修復手術を行ったことで残りシーズン全休し、次の契約が厳しくなっていた。また、'14年には左肘のトミー・ジョン手術を行っている。術後に年間13勝を挙げたこともあるが、全盛期に比べればやや球速が落ちたとされている。
右打者の懐をつくカットが見もの。
来日前はややクエスチョンが多かった左腕。また、大物外国人とあって性格面も心配されていた。しかし、2月中旬に来日するとまず彼のナイスガイぶりにチームメイトも驚いたほど。ホークスは過去に振り回された経験(代表例はメジャー通算121勝のブラッド・ペニー)があり、詳しく調査を行ったそうだ。
投げてみると150キロ超の威力抜群のストレートを披露するし、チェンジアップやカーブといった変化球も抜群にキレている。球速はまだ術前に戻っていないようだが、十二分に戦えるボールだ。さらに制球面は米球界でも年数を重ねるごとに向上したようで、特に右打者の懐をつくカットボールは武器になる。
メジャーの野球は投手優位とされる。極端にいえば捕手はボールを捕るだけの役割。だが、日本の野球は捕手のリードが投手の良し悪しを左右する。ムーアは人間性の部分からも日本向きで、アジャストしていくことで大いに活躍するのではなかろうか。
となれば、バッテリーを組むホークス正捕手の甲斐拓也との呼吸が何よりも大切になる。