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JリーグCSには魔物が棲んでいる。
広島とガンバが味わった天国と地獄。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/05/13 11:00

JリーグCSには魔物が棲んでいる。広島とガンバが味わった天国と地獄。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

復活した2ステージ制とCSの中で、森保一監督率いるサンフレッチェ広島が2013年に続くJ1制覇を果たした。

今野「冷静に戦えなかった」。

 DFをひとり失ったG大阪は89分、右サイドバックの米倉恒貴を送り出したが、代わってベンチに下げたのが、トップ下の宇佐美貴史だった。マークすべきトップ下の選手がピッチからいなくなり、森崎は攻撃参加しやすい状態だったのだ。

「冷静に戦えなかったですね、やっぱり。僕自身が一番冷静に戦えていなかった……」

 試合後の取材エリアで、今野は言葉を絞り出すように言った。

「自分でもよく分からないというのが本音ですけど、気持ちが昂ぶっていた。2-1で勝ち切りたかったけど、2-2にされてからは、冷静に考えればひとり退場しているわけだから2-2でもよかったのに、僕が素早くリスタートして、それを奪われて失点してしまった。普段どおり冷静に戦えていれば、あそこはゆっくり時間を使ってやる場面。すごく情けないし、もったいない」

絶好調だったはずが最後に暗転。

 この第1戦が広島でのアウェーゲームだったなら、2-2の意味合いは違っただろう。

 だが、同じスコアでも、ホームでアウェーゴールを2度も許した末の引き分けは、相手に大きなアドバンテージを与えてしまう。ホームでは何としても勝ちたいという気持ちが焦りを生んでも不思議ではなく、今野のミスから生まれた広島の決勝ゴールは、まさにホーム&アウェー決戦における勝負のアヤと言える。

 この日、今野は所狭しとピッチを駆け回ったうえ、勝ち越しゴールまで決めている。そのままG大阪が勝利していれば、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれていてもおかしくなかった。しかし、自身のゴールに喜びを爆発させてからわずか15分後、頭を抱えてピッチにしゃがみ込み、しばらく立ち上がれない今野がいた。

 その姿が表していたのは、サッカーの怖さ、大舞台の難しさ、だった。

 だが、森崎が見事な読みで失策を帳消しにしたように、今野も第2戦で先制ゴールを奪い、汚名返上に成功する。たとえミスを犯しても、引きずらない。そこに、ベテランの意地を見た。

【次ページ】 第2戦で輝いたのは浅野拓磨。

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