汚名返上の機会を待っていた。

　80分にドウグラスのゴールで広島が追いつくと、その1分後にはFKのこぼれ球を今野泰幸がボレーで叩き、G大阪が2－1と勝ち越しに成功する。

　だが、これはまだ、クライマックスの序章に過ぎなかった。

　後半のアディショナルタイム。青山敏弘が鋭いアーチのクロスを蹴り込むと、佐々木が打点の高いヘッドでとらえ、ネットを揺さぶる。

　アウェーで迎えた第1戦の土壇場で2－2に持ち込んだのだから、及第点の結果と言えた。しかし広島は、攻めの姿勢を失わなかった。

　90＋5分、G大阪陣内でボールが広島の選手に当たり、右のタッチラインを割った。ボールを手に取った今野がパトリックをめがけ、素早くピッチに投げ入れる――。

　その瞬間を狙っていた人物が、いた。

　汚名返上の機会を待っていた、森崎である。

　まんまとボールを奪った森崎は、青山とのワンツーを経て山岸智へパス。山岸のクロスに合わせたドウグラスのシュートは当たり損ねたが、こぼれ球を浅野拓磨が右足で強振する。G大阪DFに当たったボールは柏好文の前に転がり、柏が右足で叩き込む。

　試合終了を告げるホイッスルが吹かれたのは、その直後のことだった。

起死回生のインターセプト。

　実は、この決勝ゴールには伏線があった。86分、G大阪の右サイドバック、オ・ジェソクの退場である。

　スローイン時にはボールを投げ入れる選手がピッチの外に出るため、ピッチ内ではスローインを獲得した側のほうが数的不利になる。

　G大阪は退場者を出したので、ふたりも少ない状況だった。そこで、中盤の選手である今野がスロワーを務めれば、自ずと的は絞られる。

「パトリックに投げると思っていたので、狙い通りでした」

　起死回生のインターセプトに成功した森崎は、そう明かした。

「ガンバはパトリックしか前線に残していなかったし、うちのほうが数的優位だったから、後ろに人数を残してもしょうがない。前に行くチャンスがあれば行こうと思っていたんです」

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