“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
湘南・坂圭祐と柏・瀬川祐輔。
有望株が認め合った駆け引きとは。
posted2018/10/25 17:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
瀬川祐輔vs.坂圭祐。
ルヴァンカップ準決勝、柏レイソルvs.湘南ベルマーレのファーストレグとセカンドレグの180分間で、2人はハイレベルな駆け引きを見せてくれた。
この発端となったのが、三協フロンテア柏で行われたファーストレグの35分だった。
その直前、柏は自陣深くでパスを回し、最後尾まで落ちたMF手塚康平がボールをゆっくりと持ち出した。この瞬間、坂は湘南陣内のセンターライン付近で自分と右センターバック山根視来の間に立つ瀬川に意識を傾けていた。
瀬川は裏のスペースを意識しているように見えた。そう感じ取った坂は山根と挟み込む形で瀬川を見ていた。すると次の瞬間、瀬川はボールを受けに戻る形で動き出した。
「ボールを受けたところを抑えよう」
坂はその動きに合わせて食いついた。
興梠っぽい瀬川の動き方。
だが次の瞬間、瀬川は身を翻した。坂はすぐに動きの意図を悟った。
「瀬川さんの足下に行こうとすると、瀬川さんは一瞬振り返ってこっちの動きを見ると、一気に動きを変化させて裏に行かれた。『まずい、裏だ!』と急いでターンをした」
すぐに坂もターンすると、手塚からロングフィードが送られた。
「幸いボールが若干短かったので、そのまま奪えると思った」坂は、スライディングで右足を必死で伸ばしてクリア。ギリギリでピンチを防いだ。
「瀬川さんの動き出しが強烈で、手塚選手のパスがもう少し長かったら大ピンチだった。スライディングでなんとか触れたけど、『危ない』と肝を冷やした」
この駆け引きで坂は瀬川への警戒を強めるとともに、ある選手の姿が頭に浮かんだ。
「興梠選手っぽいな――」
坂がプロ入りして最も衝撃を受けたFW興梠慎三(浦和レッズ)と瀬川がダブって見えたのだ。
「瀬川さんは裏を狙うタイプということは知っていたけど、足下を匂わせながら裏を狙ってくるところが興梠選手のようだった。だから、この瞬間から興梠選手をマークした時と同じくらいの意識で臨みました。
興梠選手は動き直しが多いです。他の選手だと1回動いたら動き直しをあまりしないので、1回の動きに集中すれば良いけど、興梠選手は絶対に2、3回はしてくる、だから常に視界の中に置いておかないと見失ってしまう。それと同じ雰囲気を瀬川選手から感じました」