“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小柄でも湘南・坂圭祐はデカいヤツ。
楽しんで浦和を完封、クールなCB。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/05/05 07:00
パワープレーを仕掛けてきた浦和の槙野智章(左端)を抑える坂圭祐(左から2人目)。小柄なCBとして、どこまで高みに行けるか?
ピッチ上で選手達が出していたメッセージとは?
この坂の姿はベンチワークにも大きな影響を与えた。
終盤、チョウ・キジェ監督は交代枠を1枠残し、ベンチにはCBのアンドレ・バイアがいた。
当初のプランではバイアを入れて、4バックにする策も用意していた。しかし、チョウ監督はそれを敢えて選ばず、87分に最後の1枚としてMF梅崎司を投入した。指揮官はこのように意図を説明する。
「本当は後ろの選手を入れてゴール前を固めようかと思っていたのですが、それをするとリズムが壊れてしまうから止めました。ピッチ上で選手達が『ラインを下げなければ守りきれる』という空気を出していた。
やっぱり選手が『守れる』、『追加点を奪える』と思ったときは、どんな戦術も越えていけると思うし、どんな指示も無になりますから」
このメッセージをチョウ監督に送り続けていたのが、坂だったわけだ。
「今の僕はまだ『バイアの代役』」
後半アディショナルタイムにはマウリシオに競り勝ってロングボールを弾き返すなど、最後まで浦和にゴールを許すこと無く、1-0のままタイムアップ。2試合連続完封勝利、そして歴史的な勝利の歓喜の輪の中心には、雄叫びを挙げる坂の姿があった。
「3バックとGKの(秋元)陽太さんも含めて、絶対に守りきれると思っていた。マウリシオが上がってきてもまったく問題ないと思った。それをチョウ監督が感じてくれて、そのままでいかせてくれたことも嬉しかった。『どんどん蹴ってこい!』と自信を持ってやれた」
満足気な表情を浮かべた坂だが、これで浮かれるような人間ではない。
これまでずっとキャプテンとしてチームを、そして自分自身を客観的に見てきた男は、すぐに自らの立場についてシビア過ぎるとも感じる認識を語った。
「今の僕はまだ『バイアの代役』だと思っています。サポーターの皆さんや周りからすると、やはりバイアは絶対的な存在ですし、まだまだ『代わり』のイメージは強いと思います。でも、バイア選手と僕ではタイプがまったく違う。僕はコーチングが得意だし、機動力もあると思っているので、そこを生かしていくつもりです」