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「日本代表には、正直めちゃくちゃ入りたい」“ズタボロに心が折れた男”はなぜJ1で覚醒したのか? 日本国籍を取得した朴一圭33歳の逆転人生

posted2023/07/18 11:03

 
「日本代表には、正直めちゃくちゃ入りたい」“ズタボロに心が折れた男”はなぜJ1で覚醒したのか? 日本国籍を取得した朴一圭33歳の逆転人生<Number Web> photograph by NumberWeb

サガン鳥栖に所属するGK・朴一圭(パク・イルギュ)33歳

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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 在日コリアン3世として生まれ育った朴一圭(パク・イルギュ/サガン鳥栖)は、2022年に日本国籍を取得した。下部リーグでの研鑽を経てJリーグ屈指のGKとなった朴は、どのような思いで「日本人として生きる」ことを選んだのか。日本代表入りを目指す33歳の情熱と葛藤に迫った。(全2回の1回目/後編へ)

 ◆◆◆

「日本代表には、正直、めちゃくちゃ入りたいですね」

 朴一圭はこちらの目をじっと見つめ、落ち着いた声でそう口にした。どこか現実感のない「日本代表」という響きの曖昧な輪郭を、慎重に指先でなぞって確かなものにするように。少年時代から「パギ」という愛称で呼ばれてきたサガン鳥栖の正GKには、その願いを言葉にする権利があった。

 2023年3月。そして6月。日本代表のメンバーリストのなかに、「朴一圭」の名前はなかった。

「Jリーグ屈指のGK」を裏付けるデータとは

 今季の朴のパフォーマンスは、ごく公平に見ても「日本代表」を意識できるレベルにあると言っていい。J1第21節まで全試合に先発フル出場し、1試合の平均セーブ数は「4.3」でリーグ1位(7月14日時点)。上位進出をうかがうチームのなかで、33歳の守護神は大きな存在感を放っている。

 川井健太監督が指揮する現在のサガン鳥栖や、アンジェ・ポステコグルー監督時代の横浜F・マリノスのスタイルを知るサッカーファンの多くは、朴に対して「足元の技術に優れた攻撃的なGK」というイメージを抱いているはずだ。事実、ビルドアップへの貢献度の高さは、1試合平均「44.8本」という自陣パス数(7月14日時点/今季J1でプレーするGKの多くが20~30本台)によって裏付けられている。

 一方でセーブ数のデータに表れている通り、本分である守備をおろそかにしているわけではない。キャッチングやパンチングのスキル、ペナルティエリア内での落ち着き、ポジショニングの的確さなどは、キャリアを重ねるごとに洗練の度合いを増している。朴自身も、年々あらゆるディテールの質が向上している手応えを感じていた。

【次ページ】 プレースタイルのルーツは朝鮮学校時代に

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