太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
太田雄貴が平昌五輪で考えたこと。
マイナー競技“好循環”の作り方。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph byAugust Bizzi
posted2018/03/01 07:00
W杯パリ大会。白熱する試合展開に、観客席はおおいに盛り上がっていた。太田会長も思わず立ち上がる!
自費でW杯パリ大会を視察した理由。
その意味で、昨年末のワールドカップ東京大会(高円宮杯)と、全日本選手権での集客、話題作りもまた、一過性のものとして実施しているわけではありません。長期計画の中に組み込まれたものです。両大会ともに、もっといい形を目指して取り組みを重ね、いずれは会場が満員になり、ビジネスとして成立し、世界最高峰の大会として国際的にも認知されるようなものにしていかなければなりません。
1月下旬、私はW杯パリ大会(男子フルーレ)の視察に行きました。スタッフも含めて、全て自費での渡航です。それでも今の私には、パリ大会をどうしても見ておきたい理由がありました。
パリ大会こそが、フェンシングの国際大会で目指すべき世界最高峰の大会だと思っていたからです。
大会の世界観の作り方、演出も鮮やか。
実際、パリ大会は素晴らしいイベントでした。
フェンシングのワールドカップはシーズンで8試合開催されます。そのうち5試合がカテゴリーA大会、3試合がグランプリ大会(カテゴリーA大会より獲得ポイントが高い)となっていますが、パリ大会は東京大会(高円宮杯)同様カテゴリーA。グレードでいえば最高峰の大会ではありません。
でも選手にとって、この大会はカテゴリーA以上の意味合いを持ちます。実際私も現役時代、パリ大会については「勝てば世界選手権で勝つのと同じくらいの意味合いを持つ重要な大会だ」と位置付けて戦った記憶がありますが、今の現役選手にとってもその気持ちは変わらないようでした。「この大会に勝ちたい!」という選手のモチベーションの高さが、そのまま試合のレベルの高さにつながっていました。
それは、大会の世界観の作り方や、お客さんの盛り上げともおそらく関わりがあるのだと思います。もともとフランスはフェンシング発祥の地であり、国民性の面でもフェンシングを楽しむ風土が根づいているとは思いますが、観客の盛り上がりについても、なにかと控えめな日本と比べて、大きな差を感じざるを得ませんでした。
もう1つ、照明による演出も見事でした。ちょっと専門的な話になりますが、会場の真上に照明が下げられるバトンがあることで、直上からの照明を活用してメインピストの光量を上げることができます。合わせてピスト以外の床面照明を落とせば、演出効果がより劇的になる。この方式は、斜めの照明を当てるとせっかくの光度が下がってしまうLEDパネルとの相性を考えても、日本に是非導入したい、と感じました。でも、そういったバトンを張ることのできる体育館は日本では限られます。ここは、これからの課題といえます。