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「イノキは賭けに出ず、床に寝転がり…」あの伝説の「猪木アリ状態」はなぜ起こった? 世紀の一戦から49年…アリの“肉声テープ”で分かった新事実
posted2025/06/26 11:03

今から49年前のモハメド・アリとアントニオ猪木の異種格闘技戦。試合がはじまると猪木はマットに寝ころび、いわゆる「猪木アリ状態」に
text by

欠端大林Hiroki Kakehata
photograph by
JIJI PRESS
「世紀の一戦」と銘打たれたアントニオ猪木とモハメド・アリの異種格闘技戦。アリは「肉声テープ」のなかで台本の存在を示唆した。
それを裏付ける証言もある。
猪木戦でアリのマネージャー役をつとめたプロレスラーのフレッド・ブラッシー、そしてビンス・マクマホン・ジュニア(元WWE会長)、アリの興行を手がけた有力プロモーターのボブ・アラム(トップランク社CEO)といった当時の関係者たちは後年、「アリが猪木の挑戦を受けたのはあくまでビジネスのためであり、あらかじめ試合の台本が用意されていた」と語っている。
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彼らが語った「シナリオ」にはいくつか相違があるものの、「猪木とアリの両者は観客を十分楽しませるショーを演じた後、不測のアクシデントで試合が中止される」という、リアルファイトとは一線を画す内容であることは一致していた。
アリは来日する約2週間前(6月1日)にも米プロレス団体WWWF(現WWE)のリングに上がり、プロレスラーのゴリラ・モンスーンと乱闘を演じている。これは全米でも中継される予定だった猪木戦に向けてのプロモーションだった。
ファイトマネーは約18億円…しかし誤算が
新日本プロレス側がアリ側に支払うファイトマネーは610万ドル(当時のレートで約18憶円)。
当時のアリは、どんなに本業でギャラを稼いでも取り巻きがそのカネをたちまち費消するという状況にあり、ボクシングで得た名声を切り売りして「稼ぐ」必要に迫られていた。アリから見れば名も知れぬ東洋のプロレスラーの挑戦を受けたのも、それが手っ取り早く大金を稼げる仕事だったからに他ならない。
だが、アリにとって誤算だったのは、ショーマンであるはずのプロレスラー猪木が、なぜか真剣勝負の要求を降ろさなかったことだった。