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伝説の「猪木-アリ戦」から49年…あの試合は“ガチンコ”だったのか? モハメド・アリが語っていた“肉声テープ”から読み解く「世紀の一戦」のナゾ
posted2025/06/26 11:02

今から49年前に行われたモハメド・アリとアントニオ猪木の異種格闘技戦。試合前のアリの言葉から読み解ける、あの試合の「真実」とは?
text by

欠端大林Hiroki Kakehata
photograph by
JIJI PRESS
ここにファイル形式で保存された音源がある。
約7分間にわたり、淡々とした調子で語るやや甲高い声の男。言葉の主は、元ボクシング世界ヘビー級王者のモハメド・アリ(2016年に死去)だ。
《ミスター・イノキ、彼のマネージャーと関係者全員に伝えてもらいたいことは……俺が約束しているのは……もうひとつエキシビション・マッチをするってことだ。そして俺は、観客にもエキシビションであることを知っておいてもらいたい》
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いまから49年前の1976年6月26日、現役の世界王者だったアリはアントニオ猪木との異種格闘技戦に臨んだ。この音源は、アリ側との交渉を担当した元新日本プロレス営業本部長の新間寿氏(今年4月21日に死去、享年90)にカセットテープの形で送達されていたものである。
アリが死去した2016年、筆者は「猪木-アリ戦」を検証するため改めて新間氏を取材し、提供されたテープの内容を精査した。
「アタシもねえ、英語ができるわけでもないから、いま聞いても分からない。アンタに任せるから」
帝国ホテル内の中国料理店で、新間氏はそう語っていた。
この「肉声テープ」の内容はこれまでも部分的に紹介されてきたが、アリが語った真意を正確に汲み取ろうとする試みとは言えなかった。ここで改めて「伝説の一戦」をめぐるテープの謎を紐解いてみたい。
「仕掛人」新間寿が成立させた大一番
アントニオ猪木の懐刀として辣腕をふるい、「過激な仕掛人」と呼ばれた新間氏の実績を振り返るとき、真っ先に語られるのがこの「猪木-アリ戦」である。
実際、新間氏はこの試合を成立させた経緯やルール問題、後日談など多くの証言を残してきた。「猪木-アリ戦」についての検証作業は、交渉を一手に担った新間氏への取材なくして成り立たないことは間違いない。