ぶら野球BACK NUMBER
“巨人史上最強助っ人”の素顔。
ウォーレン・クロマティを読む。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byMakoto Kenmisaki
posted2017/07/27 07:30
名前を聞いたら誰でも思い出すであろう、あの人懐っこい笑顔――チューインガムも、その象徴だった。
『さらばサムライ野球』はジャンルを越えた名作。
この感覚は助っ人選手だけのものではないと思う。
例えば、誰もが経験する実家を出ての初めてのひとり暮らし。
最初は知らない街で人のいない部屋に帰るのが寂しかったのに、やがて駅前の商店街の店での買い物やワンルームマンションの一室が心地良く感じられるあの感じ。ようやく、自分はこの場所に受け入れられた。それだけで世界が変わって見えたものだ。
『さらばサムライ野球』は巨人軍で成功したヒーローの物語ではない。日本人もアメリカ人も関係ない。
ウォーレン・クロマティというひとりの男の7年間の挑戦と成長を追った一冊であり、人間の普遍的な葛藤を描いた名作だと思う。