ぶら野球BACK NUMBER
“巨人史上最強助っ人”の素顔。
ウォーレン・クロマティを読む。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byMakoto Kenmisaki
posted2017/07/27 07:30
名前を聞いたら誰でも思い出すであろう、あの人懐っこい笑顔――チューインガムも、その象徴だった。
原、江川、中畑、桑田…クロマティから見た同僚たち。
だが、自伝をただの感動話で終わらせないところが、嵐を呼ぶクロマティである。
王采配を「心の狭いところがある」なんつって斬ったかと思えば、いつまでたってもCM出演依頼が来ない“ガイジン選手”の不当な扱いに腹を立て、当時のチームメイトたちにも言いたい放題。
日本中のアイドルだった原辰徳をナルシスト呼ばわりし「いつも距離を置いている。一緒に飲みに行ったこともない。心から打ち解けることはない。たぶん嫉妬心が邪魔をするのだろう。お互いに、だ」と素直に心情を吐露。
江川卓は「本当のプロで彼のバックでプレーするのは気分がいい」と褒める一方で野球への情熱を失い毎年引退の話をしていたことを明かす。
若かりし日の桑田真澄は数々のスキャンダルでチームから孤立していた時期があり、優勝のビールかけも自分で自分の体にビールをかけていたという。そんな姿を見かねたクロマティは歩み寄って肩を組み、まるで兄貴のようにビールを注いでやるのだ。
「あいつは狂っている」
チームリーダーの中畑清に対しての見立ても興味深い。
「中畑は俺と同じで、生まれついてのショーマンだ。成績やスコアに関係なく、シーズンを通して同じテンションを保っている。本当に偉い奴だ。頭が下がる。皮肉なのは、ジャイアンツの中で最も王を嫌っている中畑が、王のもとで誰よりも熱心にプレーしていることだ」なんてスパイスの効いたクロマティ節炸裂(もちろん『菊とバット』で見せた、この本の共著者であるロバート・ホワイティングの筆力も健在だ)。
個人的には、やたらと乱闘騒ぎの多い中日・星野仙一監督に対して「あいつは狂っている」と嘆くところに笑ってしまった。