“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
青森山田は毎試合バス移動10時間。
プレミアイースト優勝はハングリー故?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/12/12 16:00
昨季は勝ち点1差で2位だった青森山田。今季はプレミア制覇と選手権制覇の2冠を目指す!
「環境が良くなれば弱くなってしまうかも」
「過去に一度、新幹線移動をしたら、乗り換えも多くて、かつ荷物が多くて逆に選手達が疲弊してしまった。だったらバスでゆっくり行こうと。お金もかからないからね。確かに長時間移動ばかりだけど、これを『大変』と言ってしまっては元も子もなくなってしまうので……。バスでの移動を楽しむというか、選手達もいかに有意義に過ごすかということに意識をおいてやってくれているので問題はそれほどありません。
それにこうやって苦労をすることで、精神的にも強くなるし、サッカーに対する意識、試合への意識も上がると思うんです。こんな経験、高校時代しか出来ませんから。逆に環境が良くなればウチは弱くなってしまうかもしれません。青森という土地で鍛えられていると思いますよ」
チームを全国トップレベルの強豪校に仕立てた黒田剛監督は、この環境だからこそ選手達は鍛えられると、ポジティブに受け止めている。
それは選手達も同じで、「僕らは運転をしていないし、乗っているだけ。大変な想いをして運転をしてくれているコーチの人たちに感謝していますし、だからこそ試合で中途半端なプレーは出来ないと思っています」
キャプテンのMF住永翔は、そんな殊勝なことまで口にしていた。
最終戦。首位で強敵を迎えることとなった青森山田。
抱えるハンディを苦にもせず、逆にモチベーションに変えていった彼らは、過去最高の移動距離を要した今季のプレミアリーグ・イーストにおいて、シーズンを通して安定した力を発揮。首位に立った状態で最終節を迎えていた。
FC東京U-18とのリーグ最終戦は、チームにとってまさに一大決戦となった。
第17節を終了しての順位は、
1位・青森山田:勝ち点33 得失点差+13
2位・FC東京U-18:勝ち点32 得失点差+22
3位・大宮アルディージャユース:勝ち点31 得失点差+6
3位の大宮は、青森山田とFC東京の試合が引き分けで、かつ自分達が横浜F・マリノスユースに7点差以上をつけて勝たなければ優勝の目がない。
一方、青森山田は最終戦で引き分け以上であれば、ほぼ優勝が決まる。だが、敗れればFC東京U-18に逆転優勝を許すという状況となっていた。