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シメオネ「お前ら、泣くんじゃねえ」。
CL決勝、守れなかった最後の命令。 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2016/05/31 07:00

シメオネ「お前ら、泣くんじゃねえ」。CL決勝、守れなかった最後の命令。<Number Web> photograph by AFLO

アトレティコの運動量は、シメオネの求心力によって維持されている部分が少なからずある。彼の退団も噂されているが果たして……。

ロナウド「5番目のキッカーは任せてくれ」

「5番目のキッカーは自分に任せてくれ、とジズーに頼んだ。絶対に決められるという予感があった」

 アトレティコ4人目のキッカーであるMFフアンフランの蹴ったボールが、左ポストの根本に跳ね返った後、FWロナウドはペナルティスポットへ向かった。

 ゆっくりボールを置き、笛の音を聞くと、右足インサイドでゴール右に蹴りこんだ。

 振り返ったときにはもう、全力でユニフォームを破り捨てていた。

“ウンデシマ(11度目)”のビッグイヤー戴冠を決めたのは、やはり千両役者ロナウドだった。

「嬉しくて、嬉しくて、本当に嬉しい。CLで優勝することはプレーヤーとしての偉業だが、指導者として戴冠することはそれ以上に素晴らしいことだと知ったよ」

 監督就任から145日目、ジダンはプレーヤーと指導者両方でCL優勝を果たした史上7人目の男となった。彼の言葉は率直だった。

今季最後の命令は「おまえら、泣くんじゃねえ」。

 一方で、ダークカラーに身を包んだシメオネは、敗軍の将としての陰鬱を全身から発散していた。インテル時代の古巣サン・シーロのゴールマウスは、忌まわしき鬼門となってしまった。

「(2つのPK失敗は)運命だった。幸運は俺たちに味方してくれなかった。ただ俺の選手たちは最高に、ものすごく頑張ってくれた」

 シメオネは、選手たちへ「おまえら、泣くんじゃねえ」と、今シーズン最後の命令を下した。だがほとんどの選手は、自らも目を潤ませた親分の命令に背くことしかできなかった。

 サッカーの運命に流されるか、抗うか。

「俺たちは必ずCLで優勝できる。再び立ち上がるために、また明日から出直しだ」

 涙が乾いた後、主将ガビを初めとする子分たちは、再起へのハラを決めたようだった。

【次ページ】 リーガの欧州覇権はいつまで続くのか。

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