アトレティコ、今大会初の序盤の失点。

　即座に反撃に出ると思われたA・マドリーだが、ハイプレスの出足は鈍かった。リーガ最少失点を誇る堅守の彼らが、キックオフから15分経過するまでに失点したのは今大会初めてのことだった。

　アトレティコの武器であるカウンターの生命線は、早い展開における正確なボール捌きだが、彼らは慣れないサン・シーロの芝に足を取られた。本拠地カルデロンとちがい、ミラノのハイブリッド人工芝は短く刈り込まれていない。

　ボールを持たない時間帯も、R・マドリーは3枚の中盤を中心にゲームの流れを注意深くコントロールした。

リーガでのダービーはアトレティコに分があったが。

　後半に入り、シメオネがMFカラスコを投入すると、アトレティコは反撃の狼煙を上げた。

　FWグリエスマンによる48分のPK失敗は痛かったが、A・マドリーは主将ガビをDFラインの前に動かし、カラスコを左に、グリエスマンを右に開かせて、レアルを迎え撃つ。その間に闘将シメオネは、失意のエースFWをベンチ前に呼び寄せ、頭をはたきながら励ますことも忘れなかった。

　アトレティコは、MFカラスコの左サイド攻略を突破口に、敵陣へ切り込み始めた。交代出場の右SBダニーロが楽々と攻略されると、レアルの守備陣はパニックに陥った。

　今季リーガでの“マドリード・ダービー”はレアルの1敗1分け。A・マドリーの底力を誰より知る彼らは、リードしているにもかかわらず怖れを抱きながらプレーしていた。

　心身の緊張は、銀河系軍団自慢のBBCトリオの攻撃も狂わせた。

　カウンターを仕掛けた70分の好機に、FWベンゼマはエリア内でのGKと1対1の場面で決めきれず、さらに8分後の絶好機にもFWロナウドが追加点のチャンスを潰した。

　カウンターを失敗した直後、間延びした獲物をアトレティコは逃さなかった。

　右サイドを破った79分、MFフアンフランのクロスからMFカラスコが起死回生の同点弾を決めたとき、シメオネ親分とその選手たちは、皆で“このゲーム、もらった！”と思ったにちがいない。

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