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オシムが語る、EL&CL決勝への思い。
欧州最新事情にモウリーニョの影が。
posted2016/05/27 10:40
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
そして、2年ぶりのマドリードダービーとなったUEFAチャンピオンズリーグ決勝。
今季ヨーロッパ・クラブシーンの総括ともいえるふたつの決勝をイビチャ・オシムが語った。
5月18日におこなわれたヨーロッパリーグ決勝は素晴らしい試合だった。
誰もが望んだ通りの好ゲームであり、サッカーの面白さ・素晴らしさを余すところなく伝えるゲームだった。
近年、何度も優勝経験のあるセビージャが再び決勝に進んだ。それはセビージャにとって、リバプールに対するアドバンテージだった。リバプールは長い間、ヨーロッパでの活躍から遠ざかり、久々に進んだ決勝では勝利へのプレッシャーもとても大きかった。彼らは長年にわたり、何も成し遂げていなかったからだ。ユルゲン・クロップにとっても、それは難しい仕事だった。
セビージャには、失うものはなにもなかった。
彼らはすでに複数のタイトルを得ている。それにあとひとつ加わろうがなかろうが、そう大きな違いはない。特別なことでもない。彼らは慣れており、しかもコンパクトで成熟したチームを構築している。選手のクオリティも高く、決勝は勝利に値する内容だった。
リバプールらしくもなく、クロップらしくもなく……。
リバプールにはちょっと失望した。
私からすれば、彼らは慎重になりすぎた。負けることを恐れてリードを守り切ろうとし、まるで引き分けでもいいような戦い方だった。ここまで徹底して攻撃的なサッカーを実践してきたクロップのスタイルではなかった。チームもまた、そんな戦い方に慣れてはいなかった。
リバプールはミランとの2005年トルコ・イスタンブールでのチャンピオンズリーグ決勝――0-3から追いつきPK戦でミランを破った試合以来、自分たちは何かを成しうるという自信を持ち続けていた。だが、ある瞬間に持ちこたえられずに、違いも作り出せなかった。
セビージャはそこをうまく利用した。