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オシムが語る、EL&CL決勝への思い。
欧州最新事情にモウリーニョの影が。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/05/27 10:40
ジェリェズニチャルの監督時代の1985年、UEFAカップ(現在のUEFAヨーロッパリーグの前身)準決勝まで進んだこともあるオシム。
今季は守備的なチームの台頭が目立つ。理由は、あの男。
一方、チャンピオンズリーグ決勝は、2年前と同じカード――レアル対アトレティコのマドリードダービーになった。
昨年のバルセロナと合わせ、スペイン勢はこの3年間でのべ5回決勝に進出。今日のヨーロッパは、スペインのクラブがまだ圧倒的な優位に立っている。
もうひとつの特徴は、守備的なチームの台頭が目立つことだ。
アトレティコ・マドリーはカウンターを主体にした、結果を最優先に考えるチームだ。勝たなければ意味がない。相手の疲労や攻撃のスキを突いてカウンターを仕掛けて点を取る。そうした戦い方に特化したチームが躍進している。
結果を求めたリアルな戦い方をしたときに、彼らは特に優れていることを証明して見せた。結果が第一で、それ以外は二の次という考え方は、ジョゼ・モウリーニョの影響が大きい。
どれだけいいプレーをして素晴らしい試合をしても、結果が伴わなければ何もならない。大事なのはあくまでも結果だ。それだけ多くの金がサッカーに投資されており、その金を得るに値することを証明する必要があるからだ。
意欲旺盛でコンディションも良いアトレティコ。
決勝に関していえば、勝利への意欲がより高いのはアトレティコだ。
レアルはこれまでもあらゆるタイトルを手に入れて、選手も築いてきたキャリアに満足している。彼らは試合に向けてモチベーションを再び100%に上げねばならず、それは簡単なことではない。しかも戦う相手は失うものが何もなく、勝利への意欲に溢れている。だから私はアトレティコが有利と見ている。
レアルはこれ以上何かを獲得できることを示す必要がない。もちろんリーガ優勝を逃してタイトルは欲しいし、うまくいくときはいくだろう。だが、うまくいかないときは、通常のモチベーションで戦える相手ではない。そのうえフィジカルやメンタルの疲労の問題もある。
よりフレッシュなのはアトレティコだろうし、彼らの実践するサッカーもレアルとは違う。相手を疲れさせるサッカーだ。疲労が溜まっている相手にはとても厄介だ。派手でもアトラクティブでもないが効果的だ。