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柏の浦和対策が実ったナビスコ決勝。
J屈指の名将対決は、敬意とともに。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2013/11/06 10:30
多くの主力を欠きながら、遂に浦和に勝利した柏・ネルシーニョ監督。カップ戦巧者ぶりを見せ、3年連続のタイトルを獲得した。
スタイルを貫き、柏を退け続けてきた浦和。
昨年はリーグ開幕早々の第2節、柏はチームのキーマンで'11年のリーグMVPに輝いたレアンドロ・ドミンゲスを阿部勇樹に封殺されて0-1で完封負け。雪辱を期したはずの第27節も前半に先行しながらもゲームを支配され、最終的には後半アディショナルタイムに決勝ゴールを許して敗戦を喫した。
極めつけは今季のリーグ第13節、5月26日のことだった。
ナビスコ杯決勝と同じく国立で行われた一戦は、ACLなどの過密日程でコンディションが万全でなかった柏に対して、浦和のアタックが炸裂した。柏木陽介の2得点などで70分までに浦和が4点のリードを奪う圧倒ぶり。柏はセットプレーから2点を返したが、最終的には6-2という圧倒的なスコアで浦和が勝利したのだった。
この試合後、ミシャは2失点のシーンを課題に挙げながらもこのように語っていた。
「我々のチームに、典型的なDFというタイプの選手はいません。チームが勝利していればそういった部分がよしと思われるでしょうが、負けていれば『なぜ典型的なDFタイプの選手を置かないんだ』と言われます。ただ我々は全員が攻撃に参加し、全員が仕掛けるサッカーをする。そういうコンセプトの下にやっています」
ナビスコ決勝直前の10月27日に行なわれたリーグ第30節でも、浦和が2-1と勝利。3バックを採用するなど徹底的に浦和対策を練るネルシーニョに対して、自分たちのスタイルを崩さずに戦いに挑むミシャのポリシーに軍配が上がり続けてきたのだ。
出場停止やけが人を抱えながら、守りきった柏。
そんな中で迎えたナビスコ杯決勝。「我々は得点を取りに行く姿勢を見せました」とミシャが語るように、浦和は槙野智章らをはじめとした後方の選手が攻撃に参加するなど、普段通りのスタイルを貫いた。対する柏は主将の大谷秀和と橋本和が出場停止。また最終ラインを支えてきた鈴木大輔やキム・チャンスらを負傷で欠く中で、ボランチが本職の谷口が3バックに入るスクランブル状態ながら、集中力を保って最後の局面を守りきった。
そして前半アディショナルタイムに、その粘りは結実する。藤田のインステップキックでのクロスから、ファーサイドに走りこんだ工藤壮人がヘディングで先制ゴールを叩きこみ、これが結局決勝点となった。