キーパーソンを消された浦和、生かした横浜。

　再び、横浜FMの樋口監督の言葉である。

「ボールを繋ぎたいチームが繋げなかったら、おそらくイライラしてくるだろうと。浦和はゴールキック、バックパスでもGKがビルドアップに絡むケースがあるので徹底的に前から行こうと決めていました。そして1トップの興梠選手に対しても、縦パスが入った際のチャレンジ＆カバーをセンターバックに徹底させました」

　パスへの素早い反応と巧みな体の使い方で、浦和のアタックにスイッチを入れる興梠に対して、中澤佑二と栗原は激しいチェックで自由を与えなかった。前線の興梠と原口元気が味方のフォローを受けられず、攻撃の形を作れない状況が続いたのだ。

　ボールをなかなか保持できない浦和をあざ笑うかのように、横浜FMは中村俊輔がボランチやサイドハーフの位置へとポジションを頻繁に移して、自在にボールを操る。48分にはその中村が利き足ではない右足でのミドルシュートで決定的な3点目を叩き込んだが、そこに至るまでに、横浜FMの積み重ねた“ジャブ”が浦和にダメージを与えていたのだった。

　終盤に浦和がチャンスを作る場面もあったが、アディショナルタイムに差し掛かろうとした時にも、ボールキープを試みたマルシオ・リシャルデスが佐藤優平と中町公祐に強烈なプレッシャーをかけられてボールを奪われるなど、横浜FMに試合の流れを掌握されたままタイムアップのホイッスルを聞いた。

最後に勝てば、敗戦も笑い話になる。

　リーグ優勝を争う横浜FMに2敗を喫した浦和。それでもまだ首位との勝ち点差は「4」の位置につけている。

　この日は2失点に絡んでしまったものの、チーム内3位となる6ゴールを挙げるなど攻守に欠かせないDF那須もこう語っている。

「最終的に“てっぺん”にいれば、今日の敗戦を笑い話にできるはずです」

　繋ぎのスタイルを貫く浦和が、8月31日までやり残してしまった「夏休みの宿題」。

　中2日とはいえ、土曜日に行われる新潟戦で同じ間違いはできない。埼スタに駆け付けるファンの前で、宿題の答え、すなわちチームの成長を示すことはできるのか。