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首位を争う直接対決で横浜に完敗。
浦和が残した「夏休みの宿題」とは。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2013/08/30 10:32
対策を練られるのは、存在感を放っていることの裏返しでもある。各クラブの情報は行きわたり、地力が問われる終盤戦を浦和はどう戦うのか。
浦和を苦しめた、横浜・樋口監督の狙いどころ。
まず7月17日、打ち合いの末に3-2で横浜FMに軍配が上がった埼スタでの一戦でのこと。
横浜FM・樋口靖洋監督の指示は明確だった。
「こちらがボールを持った攻撃時には、ボランチ周辺で前を向いた時に(相手守備陣の)裏を取ったり、サイドハーフがボールに食いついてきた時に裏に飛び出してセンターバックを引き出していくのをチーム全体で共有できました」
前半10分、横浜FMの先制点のシーンが狙い通りだった。
右サイドの兵藤慎剛のクロスに対して、フリーとなったマルキーニョスがヘディングシュートを叩き込んだが、兵藤は浦和のサイドハーフと最終ラインの間に生まれたサイドのスペースへと巧みにポジショニングし、中央に流れた齋藤学が兵藤へ素早くパスを通した瞬間に浦和守備陣の対応は後手に回ってしまったのだ。
浦和は前半のうちに那須大亮、槙野のゴールで逆転して前半を折り返したものの、63分にサイドからのクロスを巧みに受けた齋藤、そして82分には中村俊輔のCKから栗原勇蔵にヘディングシュートでゴールネットを揺らされ、最終的に勝ち点を落とした。
雪辱を期すも、一方的なスコアで再び横浜に屈す。
2得点を奪いながらの逆転負け。シーズン序盤には素早い攻守の切り替えでゲームを支配したケースも多かったが、横浜FMの対策によってその好循環を打ち消された。
その現状をキーマンである柏木陽介は、試合後にこう表現した。
「守備に関しては良い時は立ち上がりから前で奪いに行けていたんですけど、今は前から行った時に後ろが来ていないこともあり、少し重たい印象があります」
雪辱を期したはずの8月28日。日産スタジアムでの戦いは、先の柏木の言葉がより顕著になった。
0-3と一方的なスコアが示す通り、この日の浦和は守備だけでなく持ち味の攻撃でも沈黙を強いられ、横浜FMに主導権を奪われてしまった。
横浜FMが攻守にわたって浦和を上回ったポイントは、ありきたりな表現だが“徹底したプレッシャー”だった。浦和のアタックの生命線は、後方の選手がビルドアップ時に相手守備のスキをついて最前線の興梠慎三へと送る縦パスである。横浜FMは浦和のパスの出し手、受け手ともに徹底的に潰しにかかったのだ。