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リスク管理よりも絶えざる変化を。
柿谷を輝かせるセレッソの哲学。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/08/13 08:03
代表の中で大きな存在感を放ち続けているセレッソの風。柿谷曜一朗が加える変化は、チームをどう進化させるのか。
ざっと数えて、取り囲む取材陣は約40人。ぶら下がり記者が何重にも輪を作る光景は、柿谷曜一朗の注目度の高さを物語っていた。
8月10日に行われたJ1第20節、大宮アルディージャ対セレッソ大阪の一戦は、3得点に絡む活躍でC大阪が完勝した。試合後の取材エリアに現れたエースは、大勢の取材陣に囲まれてこう話した。
「2連敗していたので、チームが絶対にいい方向に行くようにプレーしただけ。今日は勝てて良かったですし、連敗を脱出できてホッとしています。1点目は落ち着いて決められて良かった。2点目は狙いどおり。しっかり決められて良かったです」
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もちろん話題は、海外組が揃うウルグアイ戦での、事実上の“フル代表”デビューにも及ぶ。
「チャンスがあれば、しっかり頑張りたい。自分の良さをアピールすることもそうですけど、ザッケローニ監督のサッカーを頭に叩きこまれているメンバーがいっぱいいると思うので、吸収することも大事ですし、変化をつけることも大事かもしれません」
何度も汗をぬぐいながら、柿谷は落ち着いた表情で努めて冷静に話し続けた。たどたどしさもなければ、浮ついた仕草もない。慎重に言葉を選びながら、それでいて時折ユーモアを挟むあたりにもこの男のたくましさを垣間見ることができる。
その言葉のとおり、日本代表に加わることで期待されるのは今までになかった“変化”である。停滞するムードを一変させる力を備えていることを、柿谷はこの日も自らのパフォーマンスで証明した。
暑さで低調なゲームを動かした柿谷の特殊能力とは。
大宮は夜になっても気温が下がらなかった。公式記録によれば、気温は34.2度、湿度は64%。記者席に座っているだけで汗がダラダラと滴り落ちる気候条件は、90分間ピッチを走り回る選手にとってはまさに劣悪と言っていい。
暑さは間違いなくサッカーの質を低下させ、開始早々に柿谷にゴールを許した大宮は集中力を欠いてミスを連発した。もちろんC大阪も例外ではなく、3試合ぶりの勝ち点3を手にしたとはいえその内容が充実していたわけではない。大宮にシーズン序盤の決定力さえあれば、結果は全く別のものになっていた可能性もある。
しかしそんな低調なゲームを華やかに見せたのが、柿谷の“変化させる力”だった。