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藤浪、大谷の才能を伸ばすチームは?
12球団別、高卒投手の一軍起用法。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/09/19 10:31
今秋ドラフト最大の目玉である花巻東の大谷翔平。最速160キロの本格派右腕として大成が期待されるが、打者としても高校通算56本塁打を誇り、投打ともに超高校級という前代未聞の逸材である。
広島はそろそろ「育成のカープ」を実証する好素材を。
●DeNA ~一軍で実績を残したのは下位指名の2人~
過去4年間で高校生投手の指名人数は6人。バランスがよさそうだが、'11年に大量4人を指名し、好バランスを外に向けアピールした格好だったので信用できない。当然、上位指名はこの11年の北方悠誠1人(唐津商)だけで、一軍で実績を残したのはいずれも下位指名の次の2人である(以下の年度はドラフト開催年。成績は'08年から'12年9月17日までの通算)。
'09年 | 眞下貴之(東海大望洋) | 7試合 | 24回2/3 | 1勝1敗 |
国吉佑樹(秀岳館) | 24試合 | 142回 | 4勝15敗 | |
合計 | 2人 | 31試合 | 166回2/3 | 5勝16敗 |
上位指名選手の活躍は「球団の戦略の成果」だが、下位指名選手の活躍は「本人の努力の賜物」というのが私の持論。育成に関してはお世辞にもうまいとは言えない。
●ロッテ ~極端な即戦力志向で今年も大卒狙いか~
過去4年間で高校生投手を指名したのは'08年の山本徹矢(神戸国際大付)と育成ドラフトの4人だけ。極端な即戦力志向のチームで、支配下登録されている38人の投手の中に19~21歳の世代が1人もおらず、22歳も山本徹矢1人だけ。当然、過去4年間の入団選手の中で一軍の実績があるのは山本1人だけだ。
'08年 | 山本徹矢(神戸国際大付) | 11試合 | 16回 | 0勝0敗 |
合計 | 1人 | 11試合 | 16回 | 0勝0敗 |
主力投手は成瀬善久、唐川侑己、小野晋吾と高校卒が少なくないが、そういう成功例に目を向けず、今年も大学卒に向かいそうな雲行きである。
●広島 ~そろそろ「育成のカープ」を実証する時~
高校生の育成に定評がある。投手、野手を見渡しても前田健太(24歳)、今村猛(21歳)、丸佳浩(23歳)、堂林翔太(21歳)と中心選手に高校卒が並ぶ。しかし、過去4年間のドラフトを振り返れば、1、2位の上位指名は中田廉、今村、堂林の3人と意外に多くない。
'08年 | 中田廉(広陵) | 42試合 | 66回2/3 | 2勝1敗 |
'09年 | 今村猛(清峰) | 117試合 | 172回1/3 | 4勝11敗5セーブ |
伊東昂大(盛岡大付) | 5試合 | 4回2/3 | 0勝0敗 | |
'11年 | 戸田隆矢(樟南) | 1試合 | 3回 | 0勝1敗 |
合計 | 4人 | 165試合 | 246回2/3 | 6勝13敗5セーブ |
一軍で実績を残しているのはここに挙げた4人。数はまあまあでも、本当に一軍に定着しているのは中継ぎエースと言ってもいい今村ただ1人。そろそろ「育成のカープ」を実証するような高校卒の好素材がほしい。もっとも、藤浪や大谷では元がいいので、「育成した」と胸を張って言えないが。