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「ドクターK」「藤浪の恋女房」……。
夏の甲子園を盛り上げた下級生たち。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2012/08/25 08:01

「ドクターK」「藤浪の恋女房」……。夏の甲子園を盛り上げた下級生たち。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

大阪桐蔭のリードオフマンとして優勝に貢献した森友哉。大阪大会では打率5割5分6厘、甲子園でも4割を打ち、準々決勝の天理戦では先頭打者本塁打を放った。捕手としても抜群の強肩を誇り、2年生にして走攻守ともに超高校級の評価が高い。

 取材で智弁和歌山の高嶋仁監督に話をうかがった際、下級生を起用することについての話になった。私は高嶋監督が人情を優先し3年生を優先的に起用するタイプだと勝手に思い込んでいた。しかし、高嶋監督は「意識して2人くらい(下級生を)レギュラーに入れとるんですけどね」と言った。

 今年の智弁和歌山を見ると敗れた初戦の神村学園戦、2番・阪本将太(二塁手)、3番・大倉卓也(三塁手)、5番・吉川雄大(投手)、7番・天野康大(右翼手)と、4人の2年生をスターティングメンバーで起用していた。なるほどと思う。

 初戦で下級生を3人以上スターティングメンバーで起用していたチームは、常葉橘、飯塚、桐光学園、常総学院、杵築、北大津、宮崎工、天理、浦和学院、日大三、富山工、佐世保実、成立学園、済々黌、鳴門、木更津総合、酒田南、明徳義塾、松阪と少なくない。

 あやふやな知識で申し訳ないが、年少者ほど王位継承の順位が高い部族があると聞く。王様が長生きすることによって部族の平安が長く続くという考え方は、一理ある。

 そういう考え方とは別に、その選手の実力が高いため、レギュラーとして起用せざるを得ない場合もある。第94回全国高校野球選手権に出場した中から選べば、上林誠知(仙台育英・中堅手)、竹村春樹(浦和学院・遊撃手)、松井裕樹(桐光学園・投手)、渡辺諒(東海大甲府・遊撃手)、森友哉(大阪桐蔭・捕手)がそういう選手である。

まだ2年の松井裕樹と森友哉が、世界選手権に出ることの意味。

 話は少し逸れるが、8月30日から9月8日まで韓国で第25回IBAF 18U世界野球選手権が開催される。日本は既に出場権を獲得しているが、甲子園に来られなかった大谷翔平(花巻東・投手)、森雄大(東福岡・投手)、今大会に出場している2年生では松井、森友哉の選出が囁かれていた(大谷と森友哉は選出されたが、松井と森雄大は選考から洩れた)。

 大谷は3年生なので同選手権に出場するのに支障はないが、2年生の森友哉、松井は来年の選抜大会に直結する秋の都道府県大会と日程が重なるので、学校としては出場してほしくない。噂話だが、2人の2年生を後顧の憂いなく同選手権に出場させるため都道府県大会の日程を調整できないか検討されたと聞いている。

 秋季大会の日程変更を検討させるほどその実力が評価される松井、森とはどういう選手なのか。

【次ページ】 松井裕樹の好投は、県大会を観ていれば十分予測できた。

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