「采配ミス？　もしかしたらそうなのかもしれない」

　グアルディオラが普段とは違うスタイルで挑んだのには理由があった。指揮官は試合後にこう語っている。

「アンドレス（イニエスタ）とシャビがスペースを得られると考えてのものだった。数日前からこのようにプレーしようと考えていた」

　しかし指揮官の考えたように物事は進まなかった。イニエスタもシャビも、味方を探しながら居心地悪そうにプレーし、サポートを受けられないメッシはうつむくシーンが多かった。

「采配ミス？　もしかしたらそうなのかもしれない。いずれにせよこの結果の後では、理にかなっていたとは言えないだろうが」とグアルディオラは振り返っている。

　90分間でバルサが見せた唯一の“らしい”攻撃は、前半27分メッシが中央で相手をひきつけスルーパスを通し、シャビがカシージャスと1対1になった場面のみ。

　舞台はカンプノウ。しかしピッチの上で迷うことなくプレーしていたのは、明らかにマドリーの方だった。

モウリーニョと選手たちにとって、やるべきことは決まっていた。

　ハーフタイム。ロッカールームに戻ってきたモウリーニョは、選手たちにあることを伝えている。彼らが耳にしたのは、やや意外なものだった。

　助監督アイトール・カランカは振り返る。

「ハーフタイムにモウリーニョはこんな指示をしたんだ。“もしバルサが後半、同点にするようなことがあれば、我々にとってはやりやすくなる。そうなればバルサは攻めてくる。つまりスペースができるわけだ”と」

　前半を終えたマドリーの選手たちの頭の中で、すでにやるべきことは明確だった。

　シャビ・アロンソとケディラがCBの前で中央を固め、攻撃的MFのエジルとディマリアも中央に絞り、メッシやイニエスタが使うスペースを限定する。そしてボールを奪えば、縦へ速い攻撃を――。

【次ページ】　ロナウドによる、予定通りの決勝ゴール。