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新布陣のバルサがレアルに屈した!
クラシコで2人の監督が考えたこと。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2012/04/23 11:25
決勝点をアシストしたエジルと、ゴールを決めたC・ロナウド。今季これまでのクラシコでは苦杯をなめさせられてきたふたりにとって、値千金の決勝ゴールであった。
ロナウドによる、予定通りの決勝ゴール。
シャビ・アロンソは「やるべきことが完璧にできた試合」と語っている。
ハーフタイム、そこでモウリーニョは言った。同点になれば、さらにやりやすくなるのだ、と。
後半半ば、まさにそんな展開が訪れる。アレクシスが1-1となる同点ゴールを決めた直後のことだ。
モウリーニョが狙っていた、『同点後に生まれるスペース』をマドリーは素早く突いた。カンプノウの勢いに押されるように前がかりになったバルサ。その後方のスペースにエジルがスルーパスを通し、ロナウドがバルデスのタイミングを外してゴールへ流し込む――。
1-2となったその決勝点は、今季のリーガを決める得点でもあった。
うつむくメッシ。簡単にボールを失うイニエスタ……。
バルサは90分間で72%のボールポゼッションを保つなど、ボールは常に彼らの足下にあった。しかしそれを効率的に決定機に繋げることはできなかった。
その理由が、この日グアルディオラが採用した新たな実験的布陣にあったというのは短絡的だが、その一因であったことは否定できないだろう。
3日前のチェルシー戦の疲労も影響していた。そこにはうつむくメッシがいた。イニエスタがあれほど簡単にボールを失う姿を見るのは久しぶりで、シャビは珍しく交代後にベンチのペットボトルを思い切り蹴飛ばした。何から何まで、いつものバルサではなかったのだ。
一方で、モウリーニョはいつものメンバーと、いつもの戦い方を貫いた。守備的な3ボランチという策も頭をよぎったことだろう。しかし何も変えなかったのは、このチームの確かな成長を感じていたからかもしれない。
「もはやマドリーはバルサと同じところまできた」
セルヒオ・ラモスの試合後の発言には自信が溢れていた。
「バルサとマドリーの差は最小限だということを示すことができた。差は縮まっている。もはやマドリーはバルサと同じところまできたんだ」
CL決勝で対戦する可能性こそあるが、今季のリーガには決着がついた。
セルヒオ・ラモスが言うように、もはや2強の間に差はほとんど存在しない。そこにあるのは差ではなく、戦い方であり、スタイルの違いだけだ。
静まりかえったカンプノウ、雨に濡れながら、白いユニフォームの選手たちはタイトルだけでなく、確固たる自信をも手にしたのだ。