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青学大“史上初の箱根駅伝3連覇”殊勲のメンバーは「町役場の職員」に!? 転機は西日本豪雨災害…中学駅伝で「全国4位」の強豪チームを育てるまで 

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別府響

別府響Hibiki Beppu

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posted2026/01/06 11:02

青学大“史上初の箱根駅伝3連覇”殊勲のメンバーは「町役場の職員」に!? 転機は西日本豪雨災害…中学駅伝で「全国4位」の強豪チームを育てるまで<Number Web> photograph by NumberWeb

2017年の箱根駅伝で青学大の3連覇に貢献した貞永隆佑。中学の陸上部を指導する立場となり、現在では全国的にも強豪のチームを作り上げている

 そんな貞永には、指導の際に最近、すこし気になる風潮があるという。それがスポーツ界での主体性への礼賛と、「流される」「やらされる」ことへの忌避感の強さだ。

「自分で主体的に進路や、やりたいことを選ぶ。もちろんそれは理想的な形だと思います。でも特に中学生くらいの年代だと、物事の本当の面白さや魅力って、最初からわかるわけじゃないんですよね。

 流されて始めて、やらされて続ける中で、少しずつ本当の魅力が見えてくる――そういうケースって意外と多いと思うんです。少なくとも僕は、そういう強制力がなかったら絶対、すくい上げてもらえなかったタイプなので(笑)」

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「長距離なんてそれがすごく顕著な競技」と貞永は続ける。

「野球やサッカーみたいに最初から『すごく楽しい!』と思えるシーンって、少ない。楽しくなるにはやっぱり記録が伸びてこないとダメだと思うんですけど、それにはしんどいこともやらないといけないですから」

 大変だけど、もうすこしだけやってみたら。いまはつまらないけれど、続けてみたら面白いかもしれないよ。そんな声をかけにくくなっている難しさは、指導の現場でも感じているという。

 やりたいことが明確な生徒は、もちろん良い。だが、そうでなくても別に焦ることなどないのだ。なんとなく流されているうちに、目の前の“縁”を誠実に全うするうちに、きっと自分の芯は見えてくる。貞永は自身の経験を通していま、そんな風に考えている。

「さっきも言いましたけど、僕の人生は本当に人の縁に助けられてここまで来たと思っています。その縁を形づくれたのは、もちろん陸上競技を続けていたから。でも、じゃあ自分からすごく主体的に続けていたかというと……そういうワケでもない(笑)。

 それでもいまこうして指導にまで携われているように、得るものはとても大きかった。だから、いま打ち込めるものが見つかっていない生徒は、流れに身を任せるのも良いんだと思います。もちろん生徒が自分自身の強い意志で道を選べれば一番でしょうけど……みんながそれをできるワケじゃないですから」

「神」の背中を追いかけた男の現在地

 自身の人生を「流されてきた」と言い切れる緩さと、それでいて箱根の山上りまで走ってしまった意志の強さ。そんな不思議な二律背反が、指導者としての貞永の魅力なのかもしれない。

「神」の背中を追いかけて、天下の険に挑んだ男――貞永はいま、彼だからこそ得ることができた財産を抱えて、日々、寒風吹く競技場に足を運んでいる。

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青学大「神去りし後の山」に挑んだある“無名のランナー”の追憶…箱根駅伝の絶対王者“史上初の3連覇”はなぜ達成できた?「不安はなかったです。でも…」
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