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青学大“史上初の箱根駅伝3連覇”殊勲のメンバーは「町役場の職員」に!? 転機は西日本豪雨災害…中学駅伝で「全国4位」の強豪チームを育てるまで
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別府響Hibiki Beppu
photograph byNumberWeb
posted2026/01/06 11:02
2017年の箱根駅伝で青学大の3連覇に貢献した貞永隆佑。中学の陸上部を指導する立場となり、現在では全国的にも強豪のチームを作り上げている
広島、岡山を中心とした西日本で広域的かつ同時多発的に河川の氾濫やがけ崩れ等が発生。死者は200名を超えるなど、甚大な被害が発生した。貞永の地元である熊野町近隣も、大きな被害をうけた。
「1年くらいゆっくり就職活動でもしようかな……とか思っていたら、大変なことになって。そんな中で、隣の坂町に住む知人から声をかけられたんです」
災害時の緊急事態で、とにかく人が足りない。町の臨時職員として雇用するから、避難所の運営サポートなどを手伝ってくれないか――と、そんな依頼だった。
2019年から坂町役場の職員として勤務
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当初はあくまで臨時の職員だった。だが、避難所運営チームの一員として働くうちに、そのひたむきな姿勢が評価されるようになった。結果的に、翌2019年の春からは坂町役場に正規の職員として就職することになった。
「そこから人事異動があって、2021年に坂中学校に職員として赴任しました。そこで自分の経歴から、陸上部の指導もやるようになって」
またしても不思議な人の縁に導かれて、陸上競技の世界へと戻ってくることになった。そして、実際に指導者としてのキャリアを歩みはじめてみると、自分としても意外なことに妙に性に合っていた。
「普通の公立中ですけど、入学してくれた生徒にはなるべく『陸上、やってみない?』と声をかけるようにしました。まずは競技に触れてもらわないことにははじまらないので。別に高い目標じゃなくていいから、少しだけ今の自分を超えられるように頑張ってほしいと、無理のない範囲で目標をたててもらっています」
中学校の部活動も年々、形を変えている。特に昨今は「働き方改革」もあり、教職員による指導という形式を取れない学校も増えている。そんな状況だが、貞永は土日の練習にも厭わず参加している。
「就職してようやく車を買ったんですけど、試合や練習への移動で生徒や生徒の荷物を乗せるんで……すぐ汚すんですよ、あいつら。もうキレイに使うのは諦めました」
愚痴をこぼしながらも嬉しそうに笑う姿には、充実感が滲む。

