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青学大「神去りし後の山」に挑んだある“無名のランナー”の追憶…箱根駅伝の絶対王者“史上初の3連覇”はなぜ達成できた?「不安はなかったです。でも…」
posted2026/01/06 11:00
“3代目・山の神”神野大地が卒業し、箱根駅伝3連覇&駅伝3冠に向けての「鬼門」だった山上りへと挑んだ貞永隆佑。果たしてその経緯はどんなものだったのか
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by
BUNGEISHUNJU
「あぁ、これは俺が山を走るんじゃなぁ――」
2016年の11月のこと。年始の箱根駅伝まで2カ月を切った頃、青学大3年生だった貞永隆佑は、周囲の雰囲気からそんなことを感じ取っていた。
この年の貞永は、山上りの5区候補の一人だった。だが、他にも実力の拮抗するランナーが何人かいたため、なかなか本番を走るという確信を得られずにいたのだ。
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他のランナーたちの走力を見るにつけ「2番手候補だと思っていた」という貞永の運命が変わったのが、この11月である。第1候補と思われていた先輩ランナーが、故障で走れなくなったのだ。
大学駅伝デビューが…箱根の「山上り」!?
本番まで2カ月を切った段階での故障は、ピーキングを考えると出場は絶望的である。
現実的に自分が走る可能性が高くなったことは、原晋監督やチームメイトの反応を見ても間違いなさそうだった。
「初の大学駅伝で、しかも重要な区間ということもあって、怖さはありました。でも、もちろんやっとチャンスが来たという想いも同じくらいありました」
一方で、この年の青学大の山上り=5区に選ばれることは、例年以上の意味を孕んでいた。
ひとつはそこまでチームが出雲駅伝、全日本大学駅伝と学生三大駅伝を2つ勝ち、青学大として初の学生駅伝三冠がかかっていたこと。そしてもうひとつ――最も大きかったのが「神」が居なくなった後、初めての箱根路だったことだ。
当時の青学大は2015年の初優勝から箱根駅伝を連覇し、この年は3連覇を狙っていた。
その2度の箱根優勝の原動力となっていたのが、“三代目・山の神”こと神野大地の存在だった。圧倒的なクライマーであり、その区間だけで後続に数分もの差をつけられるアドバンテージは、当時の青学大にとって唯一無二の武器だった。

