「前半からブラジルは困っていたんです」森保一監督に聞く、“なぜブラジル戦前半0－2と苦戦した？”…大逆転劇のウラに小さな誤算「最初10分で修正したプラン」 

　とはいえ、サッカーではポーカーのような「頭脳戦」だけでなく、相手を飲み込むような「勢い」も大切である。最初に心理的に出遅れると挽回に時間がかかってしまう。

　そういう勝負の流れを操る仕込みは、森保が得意とするところだ。

「最初の10分は行こうと言いました。なぜかというと、そこで行く姿勢を見せないと、自分たちのエンジンがかからず、身体が動きづらくなってしまうからです。試合前にウォーミングアップをしますが、そこから時間が空くので、心身ともにスイッチを入れ直した方がいい。

ADVERTISEMENT

　そのまま行けるんだったら行くし、そうじゃなかったら用意したプランをみんなでコミュニケーションを取りながら実行する。ブラジル戦でも最初の10分は（高強度で）行こうと伝えました」

©Asami Enomoto

　ハイプレスからミドルブロックへ――。それがブラジル相手に真っ向勝負して勝つために用意したゲームプランだった。

「ミドルブロックに気を取られているかもしれない…」

　ただし、どんなに優れたプランを用意しても、それを落とし込めるかはわからない。特に代表チームでは準備の時間が限られている。

　すべての展開を練習する余裕はなく、大事な局面を選んでトレーニングしなければならない。ピッチで取り組めなかったことは口頭で伝える形になる。監督と選手たちの絵をそろえるのは、机上で論じるほど簡単ではない。

　森保はブラジル戦までの練習において、小さな懸念点を見つけた。

ブラジル戦前のトレーニング。じつは戦術練習のときに懸念点があったという　©KYODO

「戦術練習において最初にミドルブロックの形の提示をしていたんですね。さらにブロックの位置が少しだけ低かった。コーチ陣には『これが選手のインプットになるかもしれないよ』という話をしていました」

　このコメントには補足が必要だろう。

【次ページ】　「伝え方というより、伝わり方の問題だった」