誰も知らない森保一BACK NUMBER
「前半からブラジルは困っていたんです」森保一監督に聞く、“なぜブラジル戦前半0-2と苦戦した?”…大逆転劇のウラに小さな誤算「最初10分で修正したプラン」
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木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAsami Enomoto
posted2025/12/30 11:13
NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(57歳)
森保はカタールW杯後の第二期政権から「マネジメント型監督」として力を注いでおり、基本的にコーチたちが練習を指導している。攻撃は名波浩コーチ、守備は齊藤俊秀コーチの担当だ。
コーチに任せているといっても、全責任は監督にある。森保はコーチを助けるためにも、一歩引いた場所から練習を見つめ、指示の「水漏れ」をチェックしている。
その結果、ブラジル戦前に「選手たちはミドルブロックに気を取られているかもしれない」という懸念点を見つけたのだった。
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念のため森保は「もっとブロックを上げるように伝えた方がいいかもしれない」とコーチに伝えた。
また、記者会見の場を選手たちへのリマインドとして用いたようにも見えた。森保はブラジル戦の前日会見で立ち上がりの大切さを強調した。
「アグレッシブに戦う姿勢を感じてもらえるように、まずはゴールを目指すところ、ボールを奪うところから入ってもらいたい。
それが3分で終わるのか、5分で終わるのか、10分で終わるのかわからない。いけるのであれば90分やっていく。
その後、闇雲に挑んでもおそらく相手の思う壺になってしまう。そこは賢く、相手の嫌がることを守備からやっていかないといけない。前向きのコンパクトブロックをつくって、良い距離感を持って、一人ひとりが責任を持って戦うことをチームとして共有できている」
「ハイプレスからミドルブロックへ」というゲームプランがきちんと伝わっているのか――森保はこの懸念点への対処法を慎重に見極めていた。
「伝え方というより、伝わり方の問題だった」
だが、ブラジルとのパワーバランスも影響して、嫌な予感は現実のものになってしまう。試合が始まると、日本は立ち上がりから受け身の守備になってしまった。
前半2分、最初の組織的な守備機会が訪れたが、日本はミドルブロックを組んだまま前へ出て行かない。ブラジルのボール保持者に近づくものの目前で止まり、足を出したり、体をぶつけたりしてまで取りに行かない。良く言えば「相手をミスへ誘導する賢い守備」だが、悪く言えば「ミス待ちの消極的な守備」になっていた。

