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「“島根のビリギャル”と呼ばれて(笑)」3歳からラグビー→全国制覇も経験の女子選手が“ある名門大”進学で受けた衝撃「マネージャーとしてなら…と」
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大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by(L)Shigeki Yamamoto、(R)Nobuhiko Otomo
posted2025/11/23 11:00
3歳からラグビーをはじめ、高校時代はU18日本代表候補にもなった青木蘭さん。現在は29歳になった
青木 ラグビーを続けるとしたら日体大に進学して、教師を目指しながらガチでやるか、そうでなければ辞めるか、どちらかだと思っていました。ラグビーは好きだから続けたい。だけど好きな勉強もしたい。社会で生きる力をつけたいと思っていたんです。
そうして迷っていたころに、誘われていたクラブチームの方に「慶応のAO入試を受けてみたら?」と提案されたんです。調べてみたら、湘南藤沢キャンパスには私が勉強したい授業がいろいろあったし、筆記試験だけでなく高校時代にやってきたことも評価してもらえるというし……それでチャレンジしたら、合格しました。職員室に報告に行ったらどよめきが起こりました。石見智翠館の普通科から慶大に合格した生徒は初めてだったそうで、「島根のビリギャル」と呼ばれていました(笑)。
――慶大といえば日本ラグビーのルーツ校です。
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青木 それまで女子部員はいませんでしたが、OBの方を通じて監督とは面会して、部員として入部させてもらえる方向で検討していただいていました。他の大学でも女子部員を受け入れてくれるチームが増えていたし、私自身、入試の準備の段階では蹴球部の寮にお邪魔して、蹴球部の先輩方にいろいろお世話していただいていました。「慶応も変わろうとしているんだ」というお話も伺っていたし、てっきり入れるものだと思っていました。
名門・慶大に入学も…「選手として迎えることはできません」
――でも、望み通りには運ばなかったのですね。
青木 はい。入学式の前日に「いろいろ調整しましたが、選手として迎えることはできません」と連絡をいただきました。「今の蹴球部は女子部員を受け入れている場合じゃない。女子マネージャーとしてなら迎えることができるけれど」というお話でした。
それまで男子だけで運営してきたスポーツチームが女子を受け入れるのは簡単ではない。練習メニューなどのソフト面、更衣室やトイレなどハード面の両面で対応が必要だ。ジェンダーレスは時代の趨勢と言うのはたやすいが、世間では“お金持ち”というイメージで括られることの多い慶応でも、運動部の予算は限られている。
「共学化」を目指して一定のコストをかけるのなら、女子部員を継続して迎えていく仕組みと体制を作るのは責任の意味でもコスパの意味でも求められるだろう。しかし慶大蹴球部はちょうど監督が交代する時期で、新たな枠組み作りに労力を割ける状況ではなかった。そして青木蘭の希望は、あくまでも選手としてラグビーをプレーし続けることだった。
――ショックでしたか。
青木 はい。ただ、そうなる可能性も覚悟していました。
<次回へつづく>

