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高校野球から“消えた名将”…あの甲子園“奇跡の2連覇”監督は今「勝てなくなった名門大学を再建」胴上げ拒否事件も…「噓だろ? やるわけねえだろ?」
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中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2025/09/15 11:10
香田誉士史(54歳)。かつて駒大苫小牧を率いて夏の甲子園「2.9連覇」を成し遂げた。昨年から母校・駒大の監督に
私はかつて駒大苫小牧時代の香田について『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧幻の三連覇』という本を書いた。その本を読んだという下北沢成徳(当時)の小川良樹に言われた言葉が忘れられない。小川は女子バレーボール界で知らぬ者はいない名監督である。
「今年読んだ中でいちばんおもしろかった。いい監督だね。ただ、短命だよ。こういう指導者は」
実に的を射た分析だった。あの時代の香田は身を粉にして選手にぶつかり、どこか破滅に向かっているような危うさが漂っていた。あの方法で体や精神が持つはずがなかった。
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駒大苫小牧は夏の花火そのものだった。派手に咲き、そして散った。
香田も同じ方法ではもはや通用しないことも、長続きしないこともわかっていた。
「監督、しつこいんですよ。とにかく細かい」
出村に「最近は何で怒られた?」と聞くと、苦笑しながら、こう明かした。
「練習の後、ミーティングをするんで室内練習場で待ってたんです。そんとき、携帯をいじってる選手がけっこういて。グラウンドにいるときと食事中とそうじ中は携帯は使わないっていうルールがあるんです。なので、監督に『携帯使うなって言ったよな』と。そんとき部員が70人ぐらいいたんですけど、一人ひとり『練習中と食事中とそうじ中は携帯は触りません』って言わされました。全員」
林はある種の畏怖を込めて言う。
「監督、しつこいんですよ。とにかく細かい。性格もあるんでしょうけど、ここまで神経質になれるのかな、って。でも、それをやり切らせる。この徹底力でチームがギュッとなっていくんです」
香田は年相応に物わかりがよくなった。しかし、頑是無い香田も帰ってきた。
9月16日、東都大学野球の1部リーグが開幕する。香田の指導者としての第3ステージの本番はここからである。
この秋の駒澤大はひょっとしたら、ひょっとするかもしれない。


