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「もう勝てねえのかな…」高校野球から“消えた名将”がポツリ あの甲子園“奇跡の2連覇”監督は今…記者が見た「8連敗、2部降格…大学野球で苦しむ姿」
posted2025/09/15 11:07
2005年、夏の甲子園「2連覇」を達成した駒大苫小牧。奇跡のチームを率いた名将は今
text by

中村計Kei Nakamura
photograph by
JIJI PRESS
◆◆◆
「ものわかりがよくなっちゃったからな……」
今年2月、香田誉士史はそうこぼしていた。駒澤大学の野球部グラウンド近くの食堂で酒を飲みながら食事をしていたときのことだ。
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香田は駒澤大の野球部寮の一室に住み込みながら、24時間体制で指導にあたっていた。4月になれば54歳になる香田の頭は、もう真っ白だった。
「だから、勝てねえのかな、って。そう思うことは何度もあったよ。何度もあった。勝負勘がなくなっちゃったのかな、とか」
昨春、香田は母校である駒澤大の監督に就任した。駒澤大学の最後のリーグ優勝は今永昇太(カブス)がエースだった2014年秋まで遡る。その前も13年ものブランクがあった。今や「東都の名門」の影はすっかり薄くなってしまった。そんな駒澤大にとって、香田の監督抜擢は切り札でもあった。
8連敗、2部降格…「勝てない名将」
しかし、香田が就任してからの駒澤大は、まるで世界中の勝利の女神から総スカンを食らったかのように敗戦を重ねた。
春の東都大学野球1部リーグが開幕すると、初戦こそ白星を拾ったが、そこから8連敗。最下位に沈み、2部優勝の東農大との入れ替え戦に回る。下馬評では駒澤大が圧倒的に有利と見られていたが、1勝2敗で2部降格が決まる。駒澤大は春に1部に上がったばかりだったが、わずか1季で再び2部暮らしに転落した。
2部降格後、最初のシーズンとなった昨秋も、駒澤大は悪夢のような逆転負けを味わった。香田にとっても経験したことのないような負け方だった。
「ない、ない。あんな負け」
10月29日、1勝1敗で迎えた東洋大との第3戦のことだった。この試合に勝てば、分は悪いものの、まだ優勝の可能性はあった。

