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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「子どもの頃、めっちゃ貧乏で…」元日本代表・太田宏介38歳が語る“壮絶な過去”「サッカー選手になれよ」少年の心に響いた“あの名選手”の言葉
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占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/08/10 11:04
2014年、ブラジル代表との親善試合に出場した太田宏介
今年5月のゴールデンウィークには新たな発見もあった。横浜FCの先輩で元日本代表FW城彰二のYouTubeチャンネルで活動を紹介されると、愛媛県の伊予市から児童養護施設への訪問依頼が届いた。大人に裏切られるなど、複雑な背景を持った子どもたち。当日、「こんにちは」と声を掛けても返事はなく、警戒感を示すだけだったという。
「『大丈夫かな』っていうスタート。でも、たった1時間半で『超みんなが一つになって、笑顔になった』。終わった後には控え室にも入ってきて、帰り際には車を追いかけてきて『帰らないで~』って叫んでくれて。スポーツの力をすごく感じた。誰でも来られる場をつくろうと思って活動してきたけど、来たくても来られない子もいると気づかされた。今は、自分たちが“出張”することも必要だと思って、直接出向く活動も増やそうと思っている」
ジョガスポ設立から2年。やりたいこと、やれることが増えていく――。現役時代もコツコツ磨き上げた左足からの“演出”が得意だった。2015年にはDF登録ながらリーグ1位の13アシストを記録した太田は、団体名の由来を苦笑しながら教えてくれた。
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「はじめは『ハッピー』とか『スマイル』とか分かりやすい言葉にしようと思ったけど、商標登録で全部ひっかかった! そんな時、横浜FC時代のブラジル人監督(ジュリオ・レアル)が練習中に『ジョガ!ジョガ!ジョガ!』と言っていた言葉が舞い降りてきて。ジョガ=プレー、楽しめって意味。サッカーに特化したくなかったので『これだ!』と思って飛びつきました」
子どもたちを見ながら、立ちながらのインタビューだった。クロスからシュートの練習が始まるとクロッサーの血が騒いだのか、太田が「ちょっと行ってきます」と言って飛び出した。ノーアップ。それでも、少年の頭にピタリと合わせてゴールを演出。保護者たちからは「うぉ~~」と感嘆の声が漏れ、少年の笑い声が弾ける。とにかく明るく、温かい。そこには、思いを込め、丁寧に作り上げた「ジョガ!」空間が確かにあった。〈全2回/前編から続く〉


