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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「父が自己破産、家に借金取りが…」元サッカー日本代表に“壮絶な過去”「子どものころ、めっちゃ貧乏で」少年時代の太田宏介が母に誓った約束
posted2025/08/10 11:03
元サッカー日本代表・太田宏介の少年時代。小学生時代にプレーした「つくし野SSS」では10番をつけた
text by

占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph by
Kosuke Ota
元サッカー日本代表で、2023年に引退した太田宏介さん。全国大会の常連校ではなかった高校時代に選手権2度出場、“調子乗り世代”の一員としてU-20W杯も経験した。欧州でのプレー歴もあり、一見華やかに見えるプロサッカー人生を過ごしてきた太田が、現在、精力的に取り組んでいるのがサッカーを中心としたお金を取らないキッズスクールやイベントだ。なぜ“無料”にこだわるのか。そこには、自身がもつ壮絶な過去があった。【NumberWebインタビュー全2回の前編/後編も公開中】※本文、敬称略
「きゃっきゃっきゃっ」
子どもたちの明るい声の粒が薄暮の空へと吸い込まれていく。緑に囲まれた松蔭大学(神奈川県厚木市)の人工芝ピッチで毎週月曜日に開く月謝なしのサッカー教室。太田は、ボールを追いかけ、蹴る子どもたちを優しいまなざしで見守りながら、「無料」にこだわった理由を口にした。
「自分の子ども時代、めっちゃ貧乏で(笑)。Jリーガーが来るサッカー教室とか、スポーツメーカーが開催するキッズ合宿の話を聞いても、参加費が必要になるから諦めていた。周りの友だちは行けるのに自分はいけない。ものすごい葛藤があって、モヤモヤして、うらやましくて。だから、現役時代からいつかプロを辞める時が来たら、誰でも来られるような場、受け皿をつくりたいとずっと思っていた」
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太田は東京のサッカーどころ町田市で育った。単身赴任で家にいなかった父の「記憶はほとんどない」といい、兄と母と3人での生活が穏やかな日常だった。
「今、考えたらみんなと比べていい物も持ってないし、ご飯の量も明らかに少なかった。大人になってあの時のことを思い出したら『なんだこれ!』というくらい貧乏だったと感じるけど。それでも、何ですかね。子どもの時は不思議と劣等感はなかった」

