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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「子どもの頃、めっちゃ貧乏で…」元日本代表・太田宏介38歳が語る“壮絶な過去”「サッカー選手になれよ」少年の心に響いた“あの名選手”の言葉
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占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/08/10 11:04
2014年、ブラジル代表との親善試合に出場した太田宏介
「プロのさりげない一言が、子どもたちの心を動かす。ファンサービスも好きだったし、大事にしてきたけど、引退して、年齢も重ねて、そういう大切さをより感じるようになった。自分が北沢さんに無料で会えたように、誰でも来られる場をつくりたいと思った」
現役最終年の2023年8月に秘めてきた熱い思いを具現化した。ビーチサッカー元日本代表でW杯準優勝メンバーの原口翔太郎とタッグを組み、無料のサッカーイベントや教室を企画、運営する一般社団法人「ジョガスポーツカレッジ(ジョガスポ)」を立ち上げ、代表に就任した。2人で企業や商店街に飛び込み営業をしたが、当初の反応は冷ややかだった。
「最初は仲間やツテに頼らずやろうと思って、営業資料を持って飛び込みの連続。これまで100社以上、まわったかな。最初は『理念は素晴らしい』と言ってもらえるけど……。実績は何もない、得体の知れない団体だったので断られることがほとんどだった」
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それでも、へこたれない。「プロでも気合と根性でのし上がった」と白い歯を見せる。トライ&エラーを繰り返し、地道に自治体や企業に営業、イベント実績をコツコツ積み上げた。
「最初は持ち出しもあったけど、今では賛同してくれる企業さんも集まっている。元選手や芸人さんのイベント出演料の交渉や資料作りも自分でやっている。引退して1年半。覚えることも多いですけど楽しいし、充実している。北は秋田から南は沖縄まで4000人以上の子どもたちに会えました」
このときばかりは、太田“代表”の顔になっていた。
無料サッカー教室で起きた奇跡
現在は神奈川県内で週3回、常設の無料サッカー教室も開いている。お金だけでなく、そこに垣根はない。太田はうれしそうに2つの“奇跡”を教えてくれた。
「発達障害者の子が来て、初めての習い事がジョガスポになった。今まで内気で億劫だったという子が、通うことで明るい性格となって友達もできた。めきめき上達して、その後はサッカー部に入ったと聞きました。親からは泣きながら感謝されましたね」
「親に連れられてきた不登校の子もいましたね。当初は嫌々でしたけど、徐々に溶け込んで今では学校に行けるようになって、親御さんも喜んでくれた。ここでは特別なスキルとかは教えない。みんなで楽しく、助け合う。自分も小学生のチームでは、サッカーをやらずに一日中遊ぶ日もありましたから(笑)。そんな事例も出てきて、ものすごいやりがいを感じている」


