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「内心、メラメラしてたんじゃないですか」世紀の“ONシリーズ”長嶋茂雄監督が交わした握手の意味…鹿取義隆の回想「コーチを務めて初めてのことでした」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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posted2025/08/01 17:00

「内心、メラメラしてたんじゃないですか」世紀の“ONシリーズ”長嶋茂雄監督が交わした握手の意味…鹿取義隆の回想「コーチを務めて初めてのことでした」<Number Web> photograph by KYODO

「世紀のONシリーズ」に勝利した長嶋茂雄監督は祝勝会で喜びをあらわにした

 そして極めつけは、対戦相手の指揮官だった。ダイエーを率いるのは長嶋とともにプロ野球の一時代を築き上げた盟友であり、ライバルでもあった王貞治だった。2000年という節目のシリーズは「ONシリーズ」と呼ばれ、開幕前から空前の盛り上がりを見せていた。

 投手コーチだった鹿取は長嶋の心中をこう推測する。

「態度に出すことはなかったですけど、内心、メラメラしてたんじゃないですか」

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 ONシリーズは第1、2、6、7戦が東京ドーム、第3戦から5戦が福岡ドームで開催されることになっていた。通常であれば「土日、火~木、土日」と球場ごと2連戦と3連戦が繰り返されるが、この年はダイエーの不手際で火・水曜日は福岡ドームが使用できず、「土~月、木~日」と3連戦と4連戦の間に休養日を2日挟むという極めて変則的な日程で行われることになった。

 シリーズ開幕前、鹿取は第4戦までの先発投手を長嶋に告げていたという。工藤、メイ、上原浩治、斎藤雅樹の順だ。長嶋は鹿取の提案をすんなりと受け入れた。

監督室に呼ばれるのは「怒られるとき」

 ところが巨人は1戦目を3-5、2戦目を3-8で落としてしまう。ともに12勝をあげチームの勝ち頭だった両左腕が、城島健司に一発を浴びるなどダイエー打線につかまってしまったのだ。

 5失点と、8失点。鹿取によれば5失点以上した試合の後は、必ず長嶋から監督室に来るように言われた。小言を食らうのだ。

「城島対策はどうなってるんだ? って。その通りなので謝りました」

 監督室に呼ばれるのは決まって怒られるときだった。

「勝負に厳しい人でしたからね。ひどいときは点を取られたピッチャーに対して『あんなの、顔も見たくない』とか『二軍に落とせ』とか言うこともありました。でも、明確な理由があれば別ですけど、不運が重なって失点することもある。そういうときは監督の指示は保留して、また投げさせます。それで抑えたら『よかったね』と言ってくれますから」

 ホームで連敗した巨人だったが、3戦目と4戦目を取り返し、五分に戻す。鹿取は第5戦の先発はルーキー左腕ながらシーズン9勝をあげた高橋尚成で行きたいと長嶋に進言した。ただ、このとき初めて長嶋が不服そうな表情を見せた。

【続きを読む】サブスク「NumberPREMIER」内の「興奮と感謝が確かに伝わってきた」世紀の『ONシリーズ』で長嶋茂雄が“2つの握手”に込めた想いとは?「普段から恐れ多くて…」《鹿取義隆、仁志敏久の回想》 で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。

 

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