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阪神タイガースは創設90年でついに「セ10年間の最強球団」になるか…「少しの不振で戦犯探し」長期的チーム育成が根付かなかった根本的原因
posted2025/08/02 11:02
藤川球児監督のもとでセ・リーグを独走する阪神タイガース。1リーグ制時代と10年間ごとの成績を見てみると、興味深い傾向が見えてくる
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広尾晃Kou Hiroo
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JIJI PRESS
巨人vsタイガース2強の構図は1リーグ制だけだった?
この酷暑の中、鼻息が荒い阪神タイガースファンである。交流戦直前の巨人戦では、連敗した巨人に対して阪神ファンが「がんばれ、ガンバレ、ジャイアンツ」とシュプレヒコールを送ったという。「プロ野球史上最大のライバルに対するエール」と見るべきか。
しかし、野球史を紐解けば――ごく一時期を除いて、阪神タイガースは読売ジャイアンツにとって「最大のライバル」ではなかった。巨人と阪神が優勝を目指して毎年のようにしのぎを削っていたのは、今から75年以上も前の「1リーグ時代(1936~49年)」なのである。簡単に球団史を振り返るとともに、各年代の勝敗を見ていこう。
まず1リーグ時代、各チームの勝敗は以下のようになっている。
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【1936~49】
巨人1221試783勝410敗28分 率.656優9平1.64
大阪1235試730勝472敗33分 率.607優4平2.5
セネタース702試359勝304敗39分 率.541優0平4
阪急1237試630勝566敗41分 率.527優0平3.07
南海1048試486勝532敗30分 率.477優2平4.91
中日1231試543勝645敗43分 率.457優0平5.57
東急502試221勝266敗62分 率.454優0平5.75
大洋軍2239試948勝1191敗100分 率.443優0平4
大映498試211勝272敗15分 率.437優0平6
大陽1228試462勝720敗46分 率.391優0平4
金鯱軍420試157勝249敗14分 率.387優0平6.33
大和軍654試238勝384敗32分 率.383優0平6.45
職業野球を創設した正力松太郎は、阪神電鉄に真っ先に声をかけた。東洋一と言われた阪神甲子園球場を何としても使いたかったからだ。阪神は早速、球団づくりに着手。工業都市のデトロイトにあるタイガースにちなみ、大阪タイガースと命名した。
戦前は2シーズン制も含め1936年から44年まで11シーズンあったが、巨人が8回、大阪が3回とこの2チームしか優勝していない。澤村榮治、中島治康、川上哲治の巨人に対して景浦將、藤村富美男、若林忠志の大阪はまさに好敵手だった。
じつはタイガースは“パに参加する予定だった”
戦後の1リーグ時代(1946~49)になると、山本(鶴岡)一人率いる南海が台頭して優勝2回、巨人と大阪は各1回優勝だが、1リーグ時代に「巨人―大阪(阪神)」というライバル関係が定着したのだ。
しかしタイガースが巨人のライバルだったのは、この時までだった。

