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阪神で24選手“まさかのクビ宣告”…戦力外を告げた本人明かす“星野仙一に任命された日”「お前は、北海道から沖縄まで評判が悪い。なんでや?」
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岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/08 11:00
2002年オフ、阪神は24選手を解雇し、「血の入れ替え」を行った。戦力外を告げたのは当時編成部長、黒田正宏だった
「ノムさんから久万(俊二郎)オーナーの言葉を伝え聞いたんですよ。『フロント、ヘッドコーチ、バッテリーコーチのどれにするか考えてくれ』って。常務の竹田(邦夫)さんに相談したら、『フロントに来てくれたら、応援する』と後ろ盾になってくれた。その一言がなければ、コーチのままだったでしょうね」
どの会社にも権力闘争がある。根回しをしなければ、仕事はうまくいかない。黒田は時勢を見極めていた。
「1年目から(権限の強い)編成部長やったら、バーンと弾かれますよ。球団にいた同級生から『お前、気を付けろよ。ここあかんで』とクギ刺されましたから」
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阪神はお家騒動に事欠かなかった。他球団と戦う前に内部分裂が起き、チームは崩壊していった。01年オフ、その流れにピリオドを打つ男がやって来る。根回しも巧みな“政治家”星野仙一の監督就任である。
02年、阪神は開幕7連勝で旋風を巻き起こすも、4月13日に正捕手の矢野輝弘が左肩脱臼で離脱する。その後もケガ人が相次ぎ、成績は徐々に下降。4年連続最下位から脱出したものの、4位に終わった。勝負の2年目を前に、星野監督は血の入れ替えを敢行する。大量解雇直前、黒田と2人きりの会談を持ち、“悪評”について迫った。
「評判が悪い。なんでや?」
〈わたしの耳に入ってくるのはとにかく黒田の悪い評判ばかりなのである。(中略)監督としてわたしが知る限りの黒田には問題がない。しかし、これから一緒になって大事な仕事をしていく上で、本当に信用に足る男なのかどうか。「お前は、北海道から沖縄までとにかく評判が悪い。なんでや?」と訊いたのである〉(03年10月発行/書籍『夢 命を懸けたV達成への647日』)
失礼と紙一重の問いかけに、黒田はなんと答えたのだろうか。
〈つづく〉

