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「これ以上言ったら退場ですよ」「わかってます」巨人・阿部慎之助監督の退場劇は“確信犯”だったのか? リプレー検証に“あえて抗議”した理由とは
posted2025/07/07 17:00
7月2日の阪神戦8回のクロスプレーを巡るリプレー検証に抗議し、退場処分となった巨人・阿部慎之助監督
text by

鷲田康Yasushi Washida
photograph by
SNAKEI SHIMBUN
確信犯的な退場だったとしか見えなかった。
7月2日の阪神対巨人戦の8回、ビデオ検証による判定を不服として、審判に抗議した巨人・阿部慎之助監督が退場処分を受けた。
場面は両軍無得点で迎えた8回の阪神の攻撃だった。2死一、二塁から大山悠輔内野手の打球が巨人の遊撃手・泉口友汰内野手のグラブを弾く内野安打となると、二塁走者の森下翔太外野手が一気に本塁に突入。カバーした吉川尚輝内野手が本塁に送球して本塁上でのクロスプレーとなった。
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ここで山本貴則球審はアウトのコール。しかし阪神・藤川球児監督のリクエストによるビデオ検証の結果、森下の右手が甲斐拓也捕手のタッチをかいくぐって本塁に触れたと認められて判定はセーフへと覆った。
巨人監督の退場は51年ぶり
この結果に三塁ベンチを出てきたのが阿部監督だった。淡々とした表情だが時折、リプレーが映し出されていたビジョンの方を指さして、山本球審に“抗議”をする。そこに責任審判の吉本文弘審判員らが駆けつけたが、約2分間に渡って“抗議”は繰り広げられた。
報道によると「根拠を教えてもらえないんですか?」という阿部監督に対して、審判団は「リプレーの結果については抗議できません」という問答だったようだ。それでも食い下がる阿部監督に吉本審判員が「抗議できませんよ」と警告したが、阿部監督は「分かっています」と返答してベンチに戻ろうとしなかった。これに吉本審判員が「監督、これ以上、言ったらダメですからね。退場ですよ」と通告。阿部監督は「はい」と納得して退場になったという。巨人の監督の退場は1974年の川上哲治監督以来、実に51年振りの出来事だったという。
指揮官なき試合は二岡智宏ヘッドコーチが監督代行を務めて続行されたが、巨人は0対1で敗れた。
アグリーメントには「リプレー検証によって出たすべての決定に対して異議を唱えることは許されない」と明記され、どの監督もそんなことは十二分に承知していることだ。もちろん抗議をしたとしても、判定が覆ることはほぼ100%ないことも知っている。
それなのに阿部監督は執拗に抗議を続けている。そこが退場になることを狙った、確信犯的な抗議だったと推察する理由だ。
なぜ「退場を承知」で抗議したのか
なぜ阿部監督はそんな行動に出たのか。背景にあるのは、チームが連覇に向けてかなり危険水域に突入していたことにある。



