「若い選手が“ここから伸びる”というタイミングで…」元“高校最強”ラガーマンが「退団→職探し」で気づいたリーグワン“プロ化の弊害” 

　木村自身は、どこかのチームと契約できると信じている。

　SHは専門職だ。試合には先発とリザーブの2人が必要だし、チームの練習ではFWとBKの両方にSHがつくことが望ましい。

気になる若手選手の「精神面」

　木村自身がプレシーズンでケガをしたときはチームが追加のSHを獲得した当事者になってきた。だから、直前までチャンスがあると信じることができる。だが、若い選手はそこまで逆境で望みを持ち続けられるだろうか？　競技を続ければ、あと一歩でブレイクできるかもしれないのに……。

ADVERTISEMENT

「僕が一番気になるのは、中学や高校でラグビーやスポーツを頑張っていて、でもなかなか試合に出られない選手たちのことです。いま試合に出られなくても、頑張っていることは無駄にはならない。成長曲線って、2次関数みたいなもの。なかなか成果が出なくても、あるところを過ぎると一気に成長する。だけどなかなか試合に出られないときは、自分の可能性を信じられなくなりやすい。でもどんな選手にも、そういうときはくるんです」

「成長曲線は二次関数的」と語る木村　©Nobuhiko Otomo

　木村は前回の浪人中も、負傷でプレーできない間も、自ら幼稚園や学校を訪ねてラグビー教室を開き、クラウドファンディングも活用しながら絵本を出版し、ラグビーの楽しさと努力の大切さを発信してきた。慣れない日本の環境で苦労している外国人選手とも積極的に交流して彼らの毎日をサポートしてきた。努力する価値を体現する姿勢は、プロフェッショナルのチームにおいても模範なのだ。

「だけど今は、それよりも実際のプレーでチームの勝利に貢献したい。それを見せることが、自分の一番の役目だと思っています。期待して、見ていてください」

　こんな自分が活躍すれば、チームを探している若い浪人選手に、なかなか試合に出られずに競技続行を迷っている選手に、力を与えるだろう。

　木村はそう信じて、次のオファーに備えて、今日もひとりトレーニングに向かうのだ。