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「若い選手が“ここから伸びる”というタイミングで…」元“高校最強”ラガーマンが「退団→職探し」で気づいたリーグワン“プロ化の弊害” 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2025/07/01 06:01

「若い選手が“ここから伸びる”というタイミングで…」元“高校最強”ラガーマンが「退団→職探し」で気づいたリーグワン“プロ化の弊害”<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

今季で東京サントリーサンゴリアスを退団した木村貴大。リーグ全体でも退団者が増える中、若手への影響も危惧している

 学んだのは試合中のスキルや判断力、観察力だけではない。木村がサンゴリアスで身につけた、最も自信を持っている部分はコミュニケーション力だ。

「大事なのは傾聴と主張のバランスなんです」と木村は言う。

「その前、コカ・コーラにいたときは主張しすぎた。監督の向井(昭吾)さんに『うちのチームのぬるさを変えてくれ』と言われたこともあったのですが、周りに向かって自分の意見を最初から主張しすぎました。すると、みんなは押しつけられたと感じてしまって、こちらが伝えたかったことが伝わらなかったんです。

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 その反省もあって、サンゴリアスへ行ってからは、年下の選手からも学ぼうと、まず相手の言葉を聞くようにしたんですが、そうすると今度は舐められてしまう。こっちの意見を聞いてもらえなくなって、僕が提案したプレーをスルーされてしまった」

 難しいな……と思ったとき、気づいたのが流のコミュニケーション術だった。

 流が他の選手と交わしている会話を聞いていると、言葉を発する部分と相手の言葉を聞くバランスが絶妙なのだ。つまり、傾聴と主張のバランス。

「僕はもともとガキ大将で、中学、高校の頃はもう言いたい放題だった。誰かがミスすると『ミスすんなっちゃあ』と言い放って、自分がミスしたときは『切り替え!』とか言って済ませちゃっていた(笑)。言いっ放しだったんですね。それじゃダメだけど、聞くだけでもダメ。

 当たり前のことだけど、ナギーの言動は本当にバランスが取れているし、そこを学べたことは、自分が成長できたと言える部分です。だからプレーだけでなく、チームに良い影響を与えられる選手になれている自信がある」

気になる「自分より下の世代」…そのワケは?

 そう言うと、木村は少し顔を曇らせて「でも、なかなかそうは見てもらえないんですよね」と言った。確かに木村は再就職戦線で苦戦しているんだよな……そう思って聞いていると木村は「いや、僕のことだけじゃないんです」と言った。

「むしろ気になるのは僕よりも下の世代ですね。大半の選手は高校や大学を出て、身体を作って、経験を積んで、じわじわとパフォーマンスが上がる準備ができる。でも実情は、4年か5年で試合に出られないと切られてしまうケースが多い。『ここから伸びる』というタイミングで切られちゃうんです。本当にもったいない」

【次ページ】 気になる若手選手の「精神面」

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