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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大学野球の関西“超名門校”がなぜ「全国大会辞退」に? ドラフト候補たちの無念…ベテラン記者が思う「連帯責任」と「個人責任」の線引きとは
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安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2025/06/18 17:02
ドラフト注目選手も多かった大阪商業大学。不祥事による全国大会辞退が及ぼす影響は大きい
「ここはどのあたりですか?」と富山監督に訊いたら、「奈良の山奥です」。
毎日来ている監督でも、説明不能な場所なのだろう。
広大なグラウンドのほかには空しか見えない景色のもと、ほとんどの部員が監督の強烈な一喝に神経を使いながら練習している中で、ただ一人泰然自若、黙々と堂々と真剣に、誰よりも数多くスイングを繰り返していた渡部聖弥選手は、昨秋のドラフトで西武に2位指名され、ルーキーイヤーの今年に早くもクリーンアップの一角として3割台をマークしている。
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渡部選手の広陵高からの後輩で、「広陵高のボンズ」とも評された1年生(当時)の真鍋選手は、特注の「お化けスリコギ」みたいな重たいバットをブンブン振り回して、ライトフェンスの向こうまで、見えなくなるほどの大放物線を飛ばしていたものだ。
そんな逸材たちが何人も控えるチームだから、全国の舞台での奮闘ぶりを楽しみにしていた野球ファンも多かったはずだ。
今回の「大学選手権出場自粛」は、連盟から科せられたペナルティの1つだ。
普通に考えればペナルティの対象になるのは監督と選手1名だが、チーム全体にそれが及んだことは「連帯責任」のようにも見える。だが、これは不祥事が2件続いたせいで、「重罰」を科したとも考えられる。
「連帯責任」と「個人責任」……その境目は?
では、「連帯責任」と「個人責任」……その境目はどこなのか、いったい何なのか?
それは周囲の者が「止められたのか」、「止められなかったのか」……そこに尽きるのではないだろうか。
例えば集団ないしは組織全体の空気が悪しき方向に流れ、充満し、暴発して起こる上級生による暴力事件。これは集団の誰かが「おい、ちょっと待てよ」と止めようとすれば、止められる。それを誰も止めずに起こってしまったら、組織の在り方の責任である。

