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東京六大学野球で史上25人目“ノーノー達成”早大・伊藤樹(21歳)とは何者なのか?「最初から最後まで150キロで押せる投手じゃない。でも…」
posted2025/05/26 06:00
東京六大学野球で9年ぶりとなるノーヒットノーランを達成した早大4年の伊藤樹。その老獪なピッチングはいかにして作られたのか
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
東京六大学野球でリーグ史上25人目となるノーヒットノーランが達成された。実に9年ぶりとなる快挙だが、その偉業を成した最速152キロの臙脂のエースとは何者なのか。《NumberWebレポート全2回の1回目/つづきを読む》
早稲田大学のエース・伊藤樹投手(4年・177cm84kg・右投右打・仙台育英高)の投手としての凄みや優秀さについて、これまであまり報じられてこなかったのは、それがパッと見ではちょっとわかりにくく、説明に多言を要するからだろう。
そんな伊藤投手が、とんでもない「快挙」をやってのけた。
リーグ史上25人目となる「ノーヒットノーラン」
5月19日の明治大学2回戦で、リーグ25人目のノーヒットノーラン!
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「リーグ25人目」がすごいんじゃない。
この日の明治大戦に敗れることがあれば、明治大の春季リーグ戦優勝が決まるその試合で、しかも、9回表まで早明一歩も譲らぬ0対0が続く緊迫の展開の中で、失点どころか、伊藤投手は1本のヒットも許さなかった。
優勝するためには絶対に倒さねばならない明治大を破って、優勝戦線に踏みとどまるという意味で、ただの「1勝」ではなかった。そうした大きな意味のある1勝を、ノーヒットノーランという「快挙」で飾ってみせた。
早稲田大・伊藤樹投手とは、ひと言でいうと、そういうことを平気でやってのけてしまう投手なのである。
「きついっす……もう、ダメっす」
伊藤樹投手との「立ち話」は、彼が仙台育英高で主戦格になった2年春ごろから始まったと思う。
色白の丸顔、なごませてくれるようなおだやかな笑顔をこちらに向けて、ランメニューでクタクタになっていることを、素直に伝えてくる。

